京の昼寝~♪

なんとなく漠然と日々流されるのではなく、少し立ち止まり、自身の「言の葉」をしたためてみようと・・・そんなMy Blogに

『武士の一分』

2006-12-11 | 邦画


命をかけて、
守りたい愛がある。

 

 



■監督・脚本 山田洋次
■原作 藤沢周平(「盲目剣谺(こだま)返し」文藝春秋刊【隠し剣秋風抄】所収)
■脚本 山本一郎・平松恵美子
■キャスト 木村拓哉、檀れい、笹野高史、小林稔侍、緒形拳、桃井かおり、坂東三津五郎、大地康雄 

□オフィシャルサイト  『
武士の一分


 下級武士の三村新之丞(木村拓哉)は、妻の加世(檀れい)と穏やかな生活を送っていた。 しかし、藩主の毒見役を務め失明。 妻が家禄を守ることと引き換えに、番頭の島田藤弥(坂東三津五郎)に弄ばれたことを知った彼は、目が見えぬ体で島田に果し合いを挑む。


 おススメ度 ⇒★★★☆ (5★満点、☆は0.5)
 cyazの満足度⇒★★★☆


 藤沢周平原作の山田監督による三部作の最終章がこの作品だ。
過去、『たそがれ清兵衛』、『隠れ剣、鬼の爪』、そして本作。 山田監督は主役三村新之丞役に木村拓哉を抜擢した。 映画として観る前に話題づくりは十二分だったかに思える。 少なくとも業界の視聴率請負人を獲得して、作品ができる前にすでに勝利を収めたように見えなくもなかった。

 前2作同様、ストーリーはまさに藤沢ワールドであり、映画のトーンと根底に流れる主題は不変だと思えた。 ただ淡々と下級武士の生活をどちらかといえば庶民的なアングルで捉えて見せた。

 ヒーロー(キムタク)はこの映画でもヒーローに成り得たのか?
山田監督はキムタクを主役に据えたとき、“目力”がある役者だからと彼を評した。 しかしながら映画の冒頭のシーンでは、月9に観る現代ドラマとしてのキムタクの表情や笑いがそこにあった。 下級武士ではなくまるでSMAPのキムタクそのものだった。 おいおいこれは先が思いやられるなぁと思いつつ早くもキムタク以外のサムシングを探し始めていた。

 何故、目力なのか・・・。 毒にやられ失明する新之丞にとっての“目力”とは。

 この映画ではやはりキムタク以外の脇にその存在感があったと思える。 それはやはり妻役を演じた加世役の檀れいと、徳平役の笹野高史の存在だろう。
 彼ら3人の何気ない生活のリズムが突然の主人の事故でそのリズムは狂ってしまう。 しかし加世と徳平らの地味ながらも新之丞に尽くす、遣えるところは全くといって違わない。 それを人間の、そしてこの時代の武士の妻・使用人との関係をわかりやすく捉えて描いてみせた。

 妻役の檀れいについては恥ずかしいほど何の知識もなかった。 宝塚の娘役トップにいた彼女は、もちろん歌や演技の基本は難しい宝塚のしかもトップに上がるくらいだから、力は持っていたのだろうけど、実際に映画はこの作品が初めてだったようだ。 しかしながら、その意外にこの時代の女性にフィットしているような気がした。 現代風味ではない顔(失礼)と、最近珍しい尻顎で(笑)、ひたむきな妻役をしっかり演じていたのは評価に値する。 過去、『たそがれ清兵衛』では宮沢りえ、『隠れ剣、鬼の爪』では松たか子、その二人に負けず劣らずの演技だったと思う。 いや、むしろ観る側が彼女について白紙の状態で観ることができたのが良かったのだろう。 山田監督について、僕自身、キムタクの抜擢より彼女を妻役に据えたことに拍手を贈りたい。

 そして徳平役の笹野高史。 これは地味に見える役どころだが、当たり前のよう演じているが、この映画では非常に重要なポジションだ。 新之丞の親の代から使え、時として親代わり、時として友達、でも実際は使用人。 その新之丞との会話、また加世との会話の絶妙な間を自然な演技で観せてくれた。 これは彼の役者勘が後押しをしているような演技だったし、山田監督の狙った思うツボだったのかもしれない。

 小林稔侍はやはり淡々と描かれる映画にいい意味で波を起こしてくれる。 それは嫌味のない“笑い”だ。 観てる側がブルーやグレーに心染まりだす頃、鬼気として笑いを提供してくれる。 これも非常にわかりやすい、でも誰でもできる役どころではない。 小林稔侍は小林稔侍で“味”なんだなぁ(笑)
  
 緒形拳も師匠役だったが、これぐらいのサイズの動きであればまだまだ見られるし、一言の重さの妙はしっかり活きている。 決して派手な動きは避けて、それこそ目力、老練なる言葉の重厚さにウエイトをかけるべきだろう。

 島田藤弥役の坂東三津五郎なのだが、やらしさは伝わってくるものの、免許皆伝というキレ者の凄みは伝わらない。 ビックリしたのは思っていたより背が低いことだ。 なんか拍子抜けしてしまった。 キムタクにぶつけるには色が違いすぎてないのかなぁ(笑)

 この卑怯な島田が輪をかけるように屋根に上がり切りかかるという卑劣な手段を一撃をはねのけて相手の腕(原作では頸なのかな?)を切った。 この剣こそがを「谺返し」だ。
 
 どこにでもいる(この時代にもきっといたはずの)スピーカー役の桃井かおり。 もうすぐ自身が監督(原案・脚本)する映画(『無花果の顔』)が公開されるが、かみさんが観終わったあと、「桃井かおり、あれでいいの?」って聞いていたが、僕は「いいの」と答えた。 若い方には無理かもしれないが、その昔、「前略、おふくろ様」というTVドラマがあった。 萩原健一や梅宮辰夫が出ていたドラマだったが、桃井かおりはそのドラマで「海ちゃん」という役をやっていた。 この映画の役どころを観ていて、海ちゃんが年老いていたら、こんな感じなんだろうとひとりほくそ笑んでいた(笑) だからいいのだ

 冒頭で豊かでない食事のシーンが何度も繰り返されていたこと、毒が原因で失明すること、最後のくだりのために多くの伏線を張っていたことがわかった。 原作は読んでいないが、なんとなく落としどころが見えてきた段階で、それでもやはり泣かされてしまった。 その伏線の張りが堪えていた涙腺の張りを、ついには切られたってしまったようだった。 

 そう、加世の作ったのは新之丞の好物の“芋がらの煮物”
である。 
ここにこそ目が見えなくなった新之丞が、加世のいなくあったあと、徳平の不味い飯を食べ続けていたが、徳平の連れて来た米飯炊き女の炊いたご飯、そして芋がらの煮物、それは忘れもしない加世がかつて作ってくれた懐かしくも決して忘れない加世の味だった。 決闘のシーン以外は全て静かに流れるストーリーだが、このシーンはその中でも印象的だし、心の琴線に優しく温かく響く名シーンだと言ってもいいぐらいだ。 

 一羽が死に、一羽を自由にし、鳥籠を焚き火の中にくべて燃やしてしまったあとの「また鳥籠を買わなければ」と一言こぼす新之丞のセリフが心に温かかった。 つがいの小鳥の比喩もこうして余韻を残してくれた。 


 劇中で重要なポイントであり、観終わってからも気になっていた「芋がらの煮物」ですが、検索していてわかりやすく書かれてあるらるごさんのブログ記事がありましたのでご紹介しておきます~


   らるごな暮らし芋がら(ずいき)の煮物


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50 コメント

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蕨たたき (たいむ)
2006-12-11 23:21:42
cyazさん、こんばんは。
>蕨たたき
全然気がつかなかったし、”蕨たたき”自体しりません。
慣れ親しんだ味であり、好物の芋煮。とにかく舌が記憶していたかと、そんな風に思っていました。
加世も気がついてほしいと思ってたてた献立であり、心を込めて炊いたご飯だったのだろうと、わかりやすいオチではあったけれど、ジーンとしちゃいました。
返信する
ありゃ~ (cyaz)
2006-12-11 23:59:48
たいむさん、TB&コメントありがとうございますm(__)m

>慣れ親しんだ味であり、好物の芋煮。とにかく舌が記憶していたかと、そんな風に思っていました。
ありゃ、原作の方でしたっけ(笑)?
これは失態を><

>加世も気がついてほしいと思ってたてた献立であり、心を込めて炊いたご飯だったのだろうと、わかりやすいオチではあったけれど、ジーンとしちゃいました。
そうですね! ぐっときましたね^^
物干しは大丈夫で(笑)?
返信する
脇役がしっかりすると・・ (jazzyoba0083)
2006-12-12 00:03:59
cyazさん、こんばんは!TB有難うございました。
確かに、壇さんと笹野さんの存在はこの映画では
欠くことのできない人でしたね。脇が固いと映画は
しまりますね。「蝉しぐれ」では、染五郎と木村
佳乃が現代を映画に持ってきてしまい、なんか
藤沢さんの世界との違和感を覚えたものでしたが、
キムタクを使う以上、壇さんはベストなチョイス
だったといえますね。これが当代の流行美女あたりだと「蝉しぐれ」と同じ運命になるところでした。
返信する
ですね~ (cyaz)
2006-12-12 00:12:01
jazzyoba0083さん、TB&コメントありがとうございますm(__)m

>確かに、壇さんと笹野さんの存在はこの映画では
欠くことのできない人でしたね。脇が固いと映画は
しまりますね。
仰るとおりだと僕も思います^^

>キムタクを使う以上、壇さんはベストなチョイス
だったといえますね。これが当代の流行美女あたりだと「蝉しぐれ」と同じ運命になるところでした。
なかなか難しいですよね、藤沢作品の妻なる人は^^ 目立たず騒がずで(笑)
返信する
TBありがとうございました (スナッチャー)
2006-12-12 00:35:33
cyasさん、TBありがとうございました。

宝塚ファンとしたら、檀れいさんが褒められて
とてもうれしゅうございます。
娘役のトップさん数ある中で、その美貌で知られて
いた檀さんです・・
退団後の映像の仕事で、順調なスタートを切られたようで
「本当に良かった



桃井さんですが!
>海ちゃんが年老いていたら、こんな感じなんだろう
>とひとりほくそ笑んでいた(笑)
「前略おふくろ様」のうみちゃん!
本当ですね~~そんな感じでした。
返信する
山田監督らしかった。 (あかん隊)
2006-12-12 04:25:11
TBありがとうございます。
そうそう、主役以外の俳優さんたちが、とてもよかったです。(暴言?) 桃井かおりの「海ちゃん」なんて、ものすごく懐かしいです。
返信する
Unknown (とりこぷてら)
2006-12-12 07:13:16
盲目役なのに眼光で威圧されるってのはスゴイですね。さすがキムタク。

TBありがとうございました。
返信する
感性~ (cyaz)
2006-12-12 08:57:06
スナッチャーさん、TB&コメントありがとうございますm(__)m

>宝塚ファンとしたら、檀れいさんが褒められて
とてもうれしゅうございます。
おお、お行儀の良いヅカファンですか~♪

>娘役のトップさん数ある中で、その美貌で知られて
いた檀さんです・・
実は全然知りませんでした(汗)

>退団後の映像の仕事で、順調なスタートを切られたようで「本当に良かった」
映画が初めてだ何てとても思えないくらい素晴らしい演技でした! 彼女の感性でしょうね^^
返信する
海ちゃん~ (cyaz)
2006-12-12 08:59:00
あかん隊さん、TB&コメントありがとうございますm(__)m

>桃井かおりの「海ちゃん」なんて、ものすごく懐かしいです。
知っている方は結構なお年(失礼m(__)m)ですね。
でも彼女の良さはああいうおところにもあるということを知ってほしいです!
返信する
TBどうもでした☆ (kenko)
2006-12-12 10:56:12
cyazさん、おはようございます。

出番はちょっとだけだったけど
桃井さまサイコー!でしたよー
(残念ながら海ちゃんは分からない…)
あんなおばちゃん実際いますよねw

キムタクも新之丞という役に合っていて
なかなか良かったんじゃないかと思いました。
返信する

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