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あの橋を渡るまで、兄弟でした。
■監督・原案・脚本 西川美和
■キャスト オダギリジョー、香川照之、伊武雅刀、新井浩文、真木よう子、
蟹江敬三、木村祐一、田口トモロヲ、ピエール瀧
□オフィシャルサイト 『ゆれる』
母親の一周忌で久々に故郷へ帰るところから物語は始まる。 写真家として
活躍する猛(オダギリジョー)の兄で温厚で実直な稔(香川照之)が、猛とも
幼馴染の智恵子(真木よう子)をつり橋から突き落とした容疑で逮捕された。
やがて裁判が始まり、これが事故死なのか、殺人なのか。 裁判が始まったが、
そこで稔の意外な一面を垣間見た猛は、法廷で思いもよらないことを証言する
のだった。
おススメ度 ⇒★★★ (5★満点、☆は0.5)
cyazの満足度⇒★★★☆
同じ男の兄弟をテーマに据えた作品としては先に観た『手紙』も同様のもの
だった。 多少、対峙させて観た作品にはなるが、根底に流れるものは全く
違っていたような気がする。
どこにでもいる普通の兄弟、しかし兄の殺人を弟は果たして見たのだろうか?
吊り橋の上での争いの顛末を全て記憶の中に留めることができたのだろうか?
そこには少なからず先入観が存在したはずだ。 それはそこで橋の上で
震える兄を優しく抱き寄せる優しい弟に見えるが、その実は兄のしたことを
否定できない弟がいる。 それは彼自身にも有益な結果だったのかもしれない。
しかし、裁かれる法廷での身の置き所と心中が、法廷で裁判が進むに連れて
微妙に猛の心が揺れ動く。 そして、面会する兄は、今までの猛の知らない
兄を見るのであった。
オダギリジョーのいい加減でありながら、根底に優しさを持つ弟と、田舎で
親の面倒を見つつ、いい長男を装うっていた心荒れている兄。
兄の“殺人”か否かというなかで、共に兄と弟は本性を見せてくる。
伏線は幾つも敷かれていた。
しかし、あの智恵子がすべって落ちたか兄に落とされたか、そこに結論に導く
大きな伏線が引かれていた。 兄を抱き抱えつつ、シャツの袖を下ろしている弟。
そこに少し映る兄の蚯蚓腫れした腕を。
裁判を機に、二人の兄弟、そして弁護する叔父は自分たちの父の弟。
まるで同じように兄弟仲の悪い二人。 並行して描かれる兄弟の争いには、
外から見るだけではわからない家庭内の本当の姿を映し出していた。
弟・猛(オダギリジョー)と兄・稔(香川照之)。 父(伊武雅刀)とその弁護士の
弟(蟹江敬三)。
それぞれが田舎に残り、それぞれが都会に飛び出し、思い思いの兄感・弟感を
もちつつ、崩れていく人間関係と、金欲は関わらないまでも、表裏の本心を
剥き出しに事件は180℃違う方向に走り出す。
弟の証言が兄を有罪にした。 しかしそれは後に8ミリを見て気づいたときには
刑期を終えて兄が出てきるときでもあった。
バスに乗る前のあの兄の微笑みは、弟を許した笑いだったのか、それとも
復習を帰する笑いだったのか。
人間の思っても見なかった心の揺れを、その「ゆれる」のタイトルどおり、
繊細かつ大胆に掘り下げていく脚本をも手がけた西川監督の脚本と映像表現は
素晴らしかった。 そこには女性のナイーブさというよりは、あまりにも鋭利な
切り口と、女性には理解しづらいだろう男兄弟の確執を見事に映し出していた。
蚯蚓腫れ。 ほんの一瞬でわかるかわからないかでラストを迎えて欲しかった。
そうでなければ最後のあの一瞬、僕はもっと大きく“ゆれる”ことができたと思う。
二人の役者には堪能させてもらった。 逆に色濃い木村祐一、田口トモロヲ、
ピエール瀧はあまりキャストとしてこの映画には必要なかったように思う。
もっと無味な役者の方が映画のクオリティを落とさずに済んだのではなかろうか・・・。
>こんなに人の内面をリアルに描写できるのか、と感心せずにはいられませんでした。 余韻のあるラストが非常に印象的ですね。
実生活で、ともすれば通り過ぎてしまう些細な事象にまで女性監督としての細かい心配りが出来ていた作品でした。
>西川美和監督、今後に非常に期待できる監督さんですね~
そうですね^^
>彼女の監督デビュー作の『蛇イチゴ』を先日鑑賞しましたが、こちらも私のツボにはまりました。
おっと・・・これは未見です(汗) 観なければ^^
コメント&TBありがとうございました
この作品には今までにない衝撃を受けました。
こんなに人の内面をリアルに描写できるのか、と感心せずにはいられませんでした。
余韻のあるラストが非常に印象的ですね。
西川美和監督、今後に非常に期待できる監督さんですね~
彼女の監督デビュー作の『蛇イチゴ』を先日鑑賞しましたが、こちらも私のツボにはまりました。
>この映画、私的にはものすごく満足度が高かったです。あの2人の静かな熱演には賞賛の拍手を惜しまない気持ちです。
二人とも本当に素晴らしい演技だったと僕も思います!
>せっかくいい映画なのに芸人さんとかが出るのは…というところ、すごく同感です~。
あそこは大事なシーンですからね><
TBさせていただきます^^
この映画、私的にはものすごく満足度が高かったです。あの2人の静かな熱演には賞賛の拍手を惜しまない気持ちです。
せっかくいい映画なのに芸人さんとかが出るのは…というところ、すごく同感です~。
>公開が終わってずいぶん出遅れで鑑賞した映画でしたが、各賞にノミネートされた理由が納得できました。
西川監督の女性としての視点が素晴らしい作品でした^^
公開が終わってずいぶん出遅れで鑑賞した映画でしたが、各賞にノミネートされた理由が納得できました。TBさせていただきますね。
>私が「女性の監督さんだなぁ」と思ったのは、洗濯物のシーン。お兄さんが畳むところはブログにも書きましたが、あとお父さんが苦労しながら自分で洗濯したり・・・最後、ボケで新聞を干したり・・・。生活者の目線だなぁ・・と思いました。
なるほど^^ お兄さんのそれは女性視線というより勝手なことをしている弟へのあてつけにも見えましたが(笑)
お父さんにはこれからの老人社会への不安も入っていたのでしょうね^^
「う~ん。う~ん・・・。」といろいろ考えさせられる映画ですね。
私が「女性の監督さんだなぁ」と思ったのは、洗濯物のシーン。お兄さんが畳むところはブログにも書きましたが、あとお父さんが苦労しながら自分で洗濯したり・・・最後、ボケで新聞を干したり・・・。生活者の目線だなぁ・・と思いました。
他の方はちえこさんの言動を挙げてましたけど
>こちらを読ませていただいたらどちらも本当に読み応えのある感想で、その上素晴らしく賑わってるので羨ましい!つながりをつけていただいたことに感謝しております。
恐縮ですm(__)m 自分ではまだまだ不十分だと思っているのですが(笑)
>「法廷での証言をした時の猛の真意」「バスに乗る前の稔の微笑み」この二つがまだ魅惑的な謎として残っています。いつまでも心の中で尾を引いている映画です。
重要なポイントですよね、そこは!
意見は人によって違うと思いますが、それぞれ感じるままで良いのでは^^
>ここも同感してしまいました。またよろしくお願いします。
どこで濃い色を出すかは主役を補うもので、この兄弟二人の演技はそれだけで余分な装飾は必要ないと思いました^^
実は「ゆれる」は「橋の上まで」の感想に終わっていました。あとはDVDで見返したい部分が多くて。
「法廷での証言をした時の猛の真意」「バスに乗る前の稔の微笑み」
この二つがまだ魅惑的な謎として残っています。
いつまでも心の中で尾を引いている映画です。
>色濃い木村祐一、田口トモロヲ、ピエール瀧はあまりキャストとしてこの映画には必要なかったように思う。
ここも同感してしまいました。またよろしくお願いします。
>香川さんのちょっとコワイくらいの演技に圧倒され、「けっこうデキル子なのね」とオダジョーのことをみなおすキッカケにもなった映画でございました。
香川さんの10年後、20年後の役者としての演技を観てみたいものです。楽しみな役者さんです!
>遅ればせながら『時効警察』にもハマったりしてw
おっと、ハマりましたか(笑)?
>西川監督ってほんとにスゴイ人ですね!次の作品も楽しみです。
本当に感性の豊かな方だと思います^^
香川さんのちょっとコワイくらいの演技に圧倒され、
「けっこうデキル子なのね」とオダジョーのことをみなおすキッカケにもなった映画でございました。
(オダジョーを使った超セクシー!なシーンの数々も、女性監督ならではだなぁと思います!)
遅ればせながら『時効警察』にもハマったりしてw
西川監督ってほんとにスゴイ人ですね!
次の作品も楽しみです。
>女性監督ならではの繊細さと大胆さ、主役のお二人の丁寧な演技がとっても見ごたえありました。
仰るとおりでしたね^^
>私にとって今年一番心に残った作品ですね。
そうですか^^
僕は『手紙』と対極で観れて良かったです^^
女性監督ならではの繊細さと大胆さ、
主役のお二人の丁寧な演技がとっても見ごたえありました。
それでいてタイトルを「ゆれる」とした潔さも私は気に入っています。
私にとって今年一番心に残った作品ですね。
TBさせていただきました。よろしくおねがいします!
>いつもいつも情報ありがとうございます^^
いえいえ、見て戴いて効果があれば嬉しいです(←何の効果じゃ(笑))
>すごい作品でした。女性監督ならではの独特さを感じました。
節々に女性の視点があったので本当に劇場で観れて良かったです!109様様でした(笑)
>あ、エグゼクティブシート、良かったです!!!
チネチッタが多かった僕ですが、最近は映画により109を使っています。今のところ全てエグゼクティブシートで鑑賞しています!ところでご覧になった日、夜は僕も109にいました(笑)ニアミスしてたかもしれませんね^^
>ラストは見るものによって違うでしょうね。またその時の自分の状況気分によってもあの笑顔の意味は変わっていくのでしょうね。
そうですね!それぞれの置かれた環境で感じ方は違うと思います。
>私は許した笑顔だと受け取りました。もう一回観たらまた違った感想になるのかもしれませんけどね。
なるほど、そうかもしれません。観るたびにそれは“ゆれ”たりして(笑) そこがこの映画の狙いであるのかも^^
いつもいつも情報ありがとうございます^^
すごい作品でした。女性監督ならではの独特さを感じました。
確かに他のキャストの方は、もう少し無名の方の方が良かったかもしれないですね。
あ、エグゼクティブシート、良かったです!!!
ということでTBさせて頂きます^^
ラストは見るものによって違うでしょうね。
またその時の自分の状況気分によってもあの笑顔の意味は変わっていくのでしょうね。
私は許した笑顔だと受け取りました。
もう一回観たらまた違った感想になるのかもしれませんけどね。TBさせてくださいね。
>心の奥のひっそり隠してる部分を抉り出すようなエグさがありました。
そうでしたね! ま、概して人に見せない部分は誰しもあり、それが家族のことになれば余計に他人にはわからないものです。僕も男二人兄弟で、しかも3つ違いなので、日本の教育制度の6・3・3・4制では、色んな弊害があるものですよ。
>「蛇イチゴ」もみましたが、西川監督ってすごい。
どんな頭の中してるんだろう。
以外に自分のことでありながら客観視できる人なのだと思います。タブーに踏み込むまではいかない許せるギリギリまで(笑)
この映画、なんかこう、人間のいやーな部分、心の奥の
ひっそり隠してる部分を抉り出すようなエグさがありました。
「蛇イチゴ」もみましたが、西川監督ってすごい。
どんな頭の中してるんだろう。
肉親の描き方がリアルです。肉親だからこそ ダメージを与える言葉を知っている。
肉親だからこそ遠慮がない・・・。
オダジョーも香川さんも素晴らしかったです!
>何度鑑賞したかは秘密ですが(笑)、見るたびに新しい発見があり、見るたびに「ゆれ」ました。
そのたびに違った味わいがあったでしょうね^^
>香川さんの素晴らしさを再認識しましたし、ご贔屓OJクンも入魂の演技だったと思います。
オダジョーについては耳たこかも(笑)
>ラストの解釈も見るたびに変わるのですが、希望としてはバスに乗らないで欲しい。
ラストシーンはあくまで観る側がそれぞれの想いで感じればいいのだと思いますが。
香川さんの素晴らしさを再認識しましたし、ご贔屓OJクンも入魂の演技だったと思います。
ラストの解釈も見るたびに変わるのですが、希望としてはバスに乗らないで欲しい。
お久しぶりです^^
時々ですが、こうやってコメント戴けるのは嬉しいです。あそこからコメント戴いているのはSETUKOさんだけですから^^
>瞬きひとつ呼吸ひとつもできずに画面を凝視続けていたので、見終わったあとの私は翌日までたいへんでした(笑)
よく生きていられましたね(笑)?
>私の心もぐるぐる乱されて自分の中に隠していたグレーゾーンに気づいてしまいました。ゆれましたね、激しく揺さぶられて、おとされました。満足度100パーセント!
そうですか^^それは素晴らしい!
で、グレーゾーンって(笑)?
>最後・・・兄はバスに乗っていったでしょうか?私は故郷も弟も捨てて、自分を解放するために乗ったと思います。あの田舎にいては、あの抑圧された環境から逃れるために弟を挑発して刑に服した自分の賭けを無駄にしてしまいます。
僕が兄ならバスに乗っていたでしょうね。
間違いなく映像は駅に向かうバスを示していましたから。あの最後の笑みはお前にオヤジを託すとともに俺と同じ苦しみをお前も背負えと言っているようでした。
>もう一度オダジョーと加瀬亮のスクラップヘブンをみてきます(二度目!笑)
はいはい^^ 堪能してきて下さいませませ^^
>この作品は本当に観る人に委ねられますね。
そうですね^^
>智恵子が言う『猛君の苦手なのしいたけだけだよね?』の部分は私も一応女性ながらドキッとしました。さすが女性監督だなと思わせる部分でした
さりげない会話の中に深層心理を的確に入れているところはさすがに女性監督の感性だと思います!
この映画は間違いなく私が近年見た映画の中でもっともすごい映画です!瞬きひとつ呼吸ひとつもできずに画面を凝視続けていたので、見終わったあとの私は翌日までたいへんでした(笑)私の心もぐるぐる乱されて自分の中に隠していたグレーゾーンに気づいてしまいました。ゆれましたね、激しく揺さぶられて、おとされました。満足度100パーセント!
最後・・・兄はバスに乗っていったでしょうか?私は故郷も弟も捨てて、自分を解放するために乗ったと思います。あの田舎にいては、あの抑圧された環境から逃れるために弟を挑発して刑に服した自分の賭けを無駄にしてしまいます。
役者がすばらしかったですね。オダジョーもいい役者だと思います・・・ということで、これからもう一度オダジョーと加瀬亮のスクラップヘブンをみてきます(二度目!笑)
この作品は本当に観る人に委ねられますね。
色々な立場から観て、観るたびにそれぞれ感想が変わってくるところが凄いです。
智恵子が言う『猛君の苦手なのしいたけだけだよね?』の部分は私も一応女性ながらドキッとしました。
さすが女性監督だなと思わせる部分でした。
>実は二回映画館で観たのですが、見るたびに「あの時なにがあったのか」「最後はバスに乗るのか乗らないのか」が、自分のなかでゆらいでいくような、不思議な気分に囚われています。
そうですね!結論は観る側に任されていますからね(笑)
>智恵子をめぐるワンシーンワンシーン(最初の車のミラーに映るとことか、写真集を見つけるところとか、しいたけ嫌いだよねとか、トマトとか)の怖さも、「きつい」話でした。
細かい視点は女性監督ならではのものでしたね^^
実は二回映画館で観たのですが、見るたびに「あの時なにがあったのか」「最後はバスに乗るのか乗らないのか」が、自分のなかでゆらいでいくような、不思議な気分に囚われています。
智恵子をめぐるワンシーンワンシーン(最初の車のミラーに映るとことか、写真集を見つけるところとか、しいたけ嫌いだよねとか、トマトとか)の怖さも、「きつい」話でした。
>心の揺れの描き方がうまくてただただ圧倒されました。西川監督すごいです。
本当に“ゆれ”ましたね^^
>最近小説も読んだのですが、映画には描かれていなかった本音のようなものも書かれていてなかなか興味深かったです
なるほど、それは原作も読んでみる価値がありそうですね!
アンディの日記シネマ版のこーいちです。
心の揺れの描き方がうまくてただただ圧倒されました。
西川監督すごいです。
最近小説も読んだのですが、映画には描かれていなかった
本音のようなものも書かれていてなかなか興味深かったです。