子供の頃は漫画大好きでした。杉浦茂や山根一二三が…なんて言うとトシが知れますが、最近は漫画を楽しむ歳でも無いし、今人気のある漫画はもう感性に合わなくて…ま、昭和20年代の生まれだから当然ですが。
そんな2016年、マンガ大賞を受賞したのが、野田サトルの「ゴールデンカムイ」で、新聞等で「アイヌ文化に触れられる」とか、「アイヌの若者でこれを読んでない奴はいない」などと紹介されるので、気になり試しに買ってみました。
読んでみると確かに面白く、私も道産子なのでアイヌ文化については、多少は本も持っているし…などと思っていたのですが、若い作者(多分)のアイヌ文化を知ろうとするを情熱には圧倒されました。
第一巻で出て来る弓を構える少女アシリパ、当時の女は弓を持たないとか、否、必ずしもそうではなかった…などの話もありましたが、その辺りは置いておくとして、少女の危機を救ったのが、絶滅させられたはずのエゾオオカミと言う所も「狼ラブ」の私が、惹き付けられた部分でしたし。
いま、最後に捉えられたのが札幌の月寒、と言う話を聞きましたが、当時はそれなりに開拓が進んでいた地区なので、なら、もっと山間部には人知れず生き延びた個体もいたのでは?と、思わず嬉しくなってしまうのですが。
また、昔は野山が友達だった小僧達は、小動物の通り道に罠を仕掛けウサギ等の獲物を捕った経験があるのでは?と思うのですが、そんなシーンも出て来て思わず「そうそう!」って感じで懐かしさもありますし。
冒頭にアシリパが毒矢で熊を倒すシーンがありましたが、明治政府がアイヌ民族から弓を取り上げ毒を禁止し、エイやトリカブト等の毒の調合はアイヌが持つ貴重なノウハウなのに、一律で禁じられ途絶えてしまったのは残念な事です。
そんな訳で最終巻まで全巻買ってしまったのですが、又それに合わせ北海道限定ビール、「サッポロ・クラッシック」のゴールデンカムイ・パッケージも発売になったので、早速これも祝杯ビールとして?飲んでいます。
全編通し北海道が舞台なだけあって、随所に見慣れた風景が出て来てきて、後半(24巻)に出て来る石狩川を下る外輪船、「上川丸」が川面を走る姿が良い絵になっていて、石狩川最後の渡船となった「美浦渡船」に乗せてもらった日が甦ります。
のみならず、郵便配達人が郵便物を海賊(?)から守るため、自警のため銃を持ち…などと言う話は初めて知り、勉強になりました。
ほかにも札幌の街で出てくる建物、札幌軟石の日本基督教団札幌礼拝堂やサッポロファクトリー、開拓の村にある旅館や床屋など、見覚えのある建物が多く出てくるのも嬉しいですね。
話は変わりますが、私は北海道の太平洋岸、アイヌの人達も住んでいる土地で生まれましたが、祖父の時代に岐阜から移り住んだ道産子2代目です。
そもそも岐阜でも貧農で移ってきたので、土地を手にするのも苦労したらしく耕していた田畑と生活する家とは別で、山一つ越えて離れていたので、大人の足でも30~40分位は歩いたでしょうか?
母の話によるとそんな仕事から帰ったある夜、畑の隣りに住んでいたアイヌの人が訪ねて来て、「今度浜の方に引っ越すから、今の土地を買ってもらえないか?」と。
彼が言うには、「住んでる回りの人(和人)には散々嫌な思いをさせられたので、頼まれても売る気は無いから、ぜひ、あんたんとこで買って欲しい」と。
「あんたの所は普通に付合ってもらい、親切にもしてもらったから」とも。
どんな嫌がらせを感じたのかはわかりませんが、新住民である和人が多数派となり、古くから住んでいたアイヌの人達に、和人のルールで同調圧力をかけた…?
近所の人にそんな意識があったかはわかりませんが、された方はどうとったか?
もう、というかまだ、と言うべきか、60年ほど前の話を、ふと思い出しました。
作者によると、アイヌの人達に取材をして回ると「可哀そうなアイヌの話はもうたくさんだから、かっこいいアイヌの話を書いてくれ」と励まされたそうです。
自然と共に生き、生き物すべてを神として敬い、心やさしくカッコいいアイヌ。
扉にある「天から役目無しに降ろされたものはひとつもない」も滲みます。
時代も変わりつつあるのでしょうが、このコミックが果たした役割も大きかった、そんな気がする「大団円!!!」(最終巻のタイトル)でした。