60年代の終わり頃、それまでポップスとフォークが好きだった私は、ロックに目覚めつつはあったが、それはディランやバーズ、サイモン&ガーファンクル、といった東海岸のフォーク・ロックのシャキッと音でした。
それがクリーデンス・クリアウォーター・リヴァイヴァル(以下CCR) に出合い、"南部の音"が何たるか知らないまま、ドロっと熱いものを感じた「アイ・プット・ア・スペル・オン・ユー」や、ジェームス・バートンのギターを重くしたような「スージーQ」など、ファースト・アルバムのインパクトは大でした。
だが、音楽聞き始めの小僧が"南部の音"と思っていたCCRが、実は西海岸のサンフランシスコの出身と知り、更に驚いたのはもっと後になってからですが。
上記2曲はカバーでしたが、そのあとジョン・フォガティが書いたオリジナル曲の数々。他の人達にもカバーされた「プラウド・メアリー」や、「バッド・ムーン・ライジング」とか、静かな反戦歌と言われた「雨を見たかい」など、本当に良く聞きました。
そんなCCRの映画「トラヴェリン・バンド」が上映され、好きなバンドなのと、「半世紀の時を超え、ロンドンのロイヤル・アルバート・ホールでの伝説のライブが初公開!」というコピーにも惹かれ見に行って来ました。
前半は、バンド結成のきっかけとなった中学生時代の写真が見られたり、音楽のバック・ボーンとなるアイドル(ブルーズ・ミュージシャン達)が出て来たり、さりげない日常の映像や、個々のインタビューを通じた素顔が見られたり、初期のライヴ映像があったりと、全体に興味深い内容や映像が詰まっていてとても満足。
また、「フール・ストップ・ザ・レイン」の所で空爆の映像が挟まれていて、爆弾が多く落ちた後は雲が発生し雨が降る…と言われ、そこが前記の「雨を見たかい」の話にもつながるのですが、それは置いておいて、後半では13曲からの熱いライヴをしっかり堪能。
ジョンはサンバーストのリッケンバッカーと黒いレスポールとを持ち換えながら、こちらまで汗がで飛び散ってきそうな熱演は素晴らしかったけれど、ヴォーカルもほぼソロで、ギターでもリードを演り、ジョンとそのバックバンド的なイメージも少々。
それがメンバーとの軋轢となったそうで、残念ながら後に解散してしまうのですが。
ソロとなったジョンは一人で多くの楽器を操り、多重録音でブルー・リッチ・レンジャースという架空のバンドを立上げ、私も期待して早速買ってみたのですが、あれだけ良い曲が書け、ヴォーカルも完璧だったのに、このプロジェクトは…
映画の中でドラムのダグが、「バンドの音がスタートとして"ここ!"って燃え上がるポイントがあるんだ」みたいな話をしていましたが、多分そういう事なのでしょう。プレーヤー同士の熱いものがぶつかり合う事で、より官能的な音になり、一人多重ではそこが…という事だったのでしょうね。
アメリカのルーツ・ミュージックに根ざし、あの時代を熱く駆け抜けたCCRとジョン。
4年程の活動期間ではあったけど、半世紀過ぎた今も時々CDを取り出す、思い入れのある大切なバンドとなっています。
以上、【聞きたい365日 第363話】でした。