ジャズ・オルガンは結構好きです。が、どちらかと言うとジミー・スミスなどの正統派ジャズより、リチャード "グルーヴ" ホルムズなどの、よりR&B色が強い黒くてゴリゴリした、いわゆるコテコテ系が好きなので、和ジャズのオルガンは聞いた事がなかったのですが。
ローレンス・ハモンドのハモンド・オルガン発明(1934年)以来、電子オルガンは新しい楽器として人気となり、欧米のいくつかの会社が追従。日本でも1950年代の終りからビクターとヤマハが発売を開始し、60~70年代にはコンボ型やチャーチ型を含めると9社=エース、カワイ、クロダ、テスコ、東芝、ビクター、ブラザー、松下、ヤマハ=があったと思いますが、その中心は若い女性や子供の習い事などを狙ったホームユース・タイプ。
代表的なのがエレクトーンで、そのため発売されるエレクトーンのレコードは映画音楽とかムード・ミュージック、セミ・クラッシックなどのとっつき易いもの、それらのお手本演奏的なものが主流となり、私の好みとは合わなかったのです。フワフワしたその音色も含めて。
これらのレコードはまず演奏者ありき…では無く、先に楽器ありきじゃない?と言うのは私の偏見ですが、それが手違いで(?)不得手のはずのエレクトーンでジャズ、というレコードを手にする事に。
それが1980年に出た「佐々木昭雄/バークリー・コネクション」というアルバム。
取り上げている6曲は全てジャズのスタンダード。レスリー使用とは言えきっちりジャズの音(?)が出てきているのはさすが。
使われているのはステージモデルでは無く、音楽教室指導者が普通に使っていた市販トップモデルのE-70(当時180万円)と、E-5という海外専用モデル。当然ハモンドとは違う "シュッとした音" で、エレクトーンの認識が改まりました。
その中でもB面2曲目の「ホエン・サニー・ゲッツ・ブルー」や、A面2曲目の「柳よ泣いておくれ(Willow Weep For Me)」のバラード物は心地く、特に後者は普通通りスローで始まり、途中からミディアム・テンポとなってオルガンの魅力を引き出し、このアルバム一番の押しかな。
佐々木昭雄さんは、高校生の頃からジャズ・オルガンに憧れたそうで、その後ネム音楽院に学び、19歳で1970年の第7回のエレクトーン・コンクール・グランプリ大会で入賞。後に㈶ヤマハ音楽振興会の指導講師として海外での演奏や指導を行い、その後ボストンの名門バークリー音楽大学に3年間の留学。
帰国し日本での音楽活動を開始し、バークリーで出会った宮本大路(sax)、河原秀夫(Ba)と吹込んだのがこのアルバム。その後も演奏家/指導者として活躍されていたのですが、先日のネット記事で、不慮の事故で亡くなられたと知り驚きました。
前日まで元気で楽曲のアレンジに取り組んでいたとの事。日本のジャズ・オルガンを牽引して来た一人で、お歳もまだ72歳だそうです。オルガン界も悲しいでしょうし、同年代の訃報は本当に悲しいです。
いまはどうぞ、ゆっくりとお休みになって下さい。
寂しい話になりましたが、【聞きたい365日 第360話】でした。
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