先日、 「ヨン様は日本でソン様」というネタを書いたが、今回は、正真正銘、孫正義氏率いるソフトバンクについて簡単にコメントしておこう。
2月3日に2011年第3四半期決算を発表。
日経記事
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ソフトバンク、29%営業増益 今期6000億円
iPhoneなど好調
通期の営業利益見通しの上方修正を発表したソフトバンクの孫正義社長(3日、東証)
ソフトバンクは3日、2011年3月期の連結営業利益の見通しを前期比29%増の6000億円と従来予想に比べ1000億円積み増すと発表した。米アップルの「iPhone」(アイフォーン)の好調で契約者が大幅に伸びており、6期連続で過去最高益を更新する。同日出そろった携帯電話大手3社の10年10~12月期決算では、音声通話収入の目減りが続くNTTドコモとKDDIが横ばい圏にとどまり、明暗が分かれた。
通期業績の上方修正について、孫正義社長は「高機能携帯電話(スマートフォン)やiPad(アイパッド)が順調に売れており、データ通信の伸びも大きくなっている」と述べた。
10年10~12月期の売上高は13%増の7848億円。携帯電話の契約当たり月間収入(ARPU)は4310円と3%増えた。けん引役はデータ通信。ほとんどの利用者が定額制の料金上限に張り付くiPhoneの普及で、データ通信のARPUは13%増加した。子会社のヤフーのネット広告の好調もあり、営業利益は23%増の1666億円とKDDIを420億円強上回った。純利益は654億円と2.7倍に拡大した。
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決算資料は次の通り。
■決算短信
■一般向け説明資料
■アナリスト向け説明資料(=細かい情報)
一般向け資料p.14「連結営業キャッシュフロー」
3Q累計 5,259億円、3期連続過去最高 12%増
一般向け資料p.16「連結フリーキャッシュフロー」
3Q累計 3,642億円、2期連続過去最高 28%増
一般向け資料p.17「純有利子負債」
3Q末 14,299億円 ボーダフォン日本法人買収から9,600億円削減
今回はキャッシュフローに注目した。
どれも立派な数字である。
自然体の実力で達成していれば・・・の話であるが。
そう思う理由はこうだ。
売上高は前年同期比で増えているのに売掛債権は2010年3月比で1,387億円も減少している。短信p.11によれば「主に、ソフトバンクモバイルにおいて、割賦債権の売却を行ったことによるもの」と記載。
では一体、どれだけ売却したのか?
答えはアナリスト向け資料p.17「流動資産」にあった。
・・・・割賦売掛金売却1,770億円。
昨年度は1年間で206億円しか売却していないから、思いっきりアクセルを踏んでいる。
流動化によって売掛債権が早期回収できるから本来は運転資金にかかる借入金も節約でき、純有利子負債の削減にも貢献している。
シンプルではあるが一石二鳥の効果がある手法だ。
しかし、売上債権の減少は営業キャッシュフローの増加につながる。処理自体は適正であるものの、言葉は悪いが、3Q累計営業キャッシュフロー5,259億円のうち実に3分の1の1,770億円は債権売却で嵩上げしたことになる。これをもって本当に「3期連続過去最高」と言えるのだろうか。
ソフトバンクはボーダフォン日本法人買収資金調達の際に数多くの財務制限条項が付されており、有利子負債、設備投資などさまざまな制約が付されているのは余りに有名な話。ソフトバンクとしてもその制約の中でいろいろ財務上の工夫しているワケであるが( 「少数株主持分及び長期借入金の買戻しによる支出」も涙ぐましい)、割賦債権流動化を有力な資金調達手段とせざるを得なくなっていて、その効果も含めて「過去最高更新だ~」とアピールしているところを見ると、資金事情は言うほど楽ではないかも知れない。
最近、またぞろ孫社長の関連本が出版され、ご本人は意気軒昂といったところなのであろうが、上記のような状況を見るにつけ、裏方の財務・経理部隊は大変だなぁと同情してしまう。
来年度の営業キャッシュフロー、一体どうやって最高額を更新させるのか、今から楽しみである。
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2月3日に2011年第3四半期決算を発表。
日経記事
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ソフトバンク、29%営業増益 今期6000億円
iPhoneなど好調
通期の営業利益見通しの上方修正を発表したソフトバンクの孫正義社長(3日、東証)
ソフトバンクは3日、2011年3月期の連結営業利益の見通しを前期比29%増の6000億円と従来予想に比べ1000億円積み増すと発表した。米アップルの「iPhone」(アイフォーン)の好調で契約者が大幅に伸びており、6期連続で過去最高益を更新する。同日出そろった携帯電話大手3社の10年10~12月期決算では、音声通話収入の目減りが続くNTTドコモとKDDIが横ばい圏にとどまり、明暗が分かれた。
通期業績の上方修正について、孫正義社長は「高機能携帯電話(スマートフォン)やiPad(アイパッド)が順調に売れており、データ通信の伸びも大きくなっている」と述べた。
10年10~12月期の売上高は13%増の7848億円。携帯電話の契約当たり月間収入(ARPU)は4310円と3%増えた。けん引役はデータ通信。ほとんどの利用者が定額制の料金上限に張り付くiPhoneの普及で、データ通信のARPUは13%増加した。子会社のヤフーのネット広告の好調もあり、営業利益は23%増の1666億円とKDDIを420億円強上回った。純利益は654億円と2.7倍に拡大した。
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決算資料は次の通り。
■決算短信
■一般向け説明資料
■アナリスト向け説明資料(=細かい情報)
一般向け資料p.14「連結営業キャッシュフロー」
3Q累計 5,259億円、3期連続過去最高 12%増
一般向け資料p.16「連結フリーキャッシュフロー」
3Q累計 3,642億円、2期連続過去最高 28%増
一般向け資料p.17「純有利子負債」
3Q末 14,299億円 ボーダフォン日本法人買収から9,600億円削減
今回はキャッシュフローに注目した。
どれも立派な数字である。
自然体の実力で達成していれば・・・の話であるが。
そう思う理由はこうだ。
売上高は前年同期比で増えているのに売掛債権は2010年3月比で1,387億円も減少している。短信p.11によれば「主に、ソフトバンクモバイルにおいて、割賦債権の売却を行ったことによるもの」と記載。
では一体、どれだけ売却したのか?
答えはアナリスト向け資料p.17「流動資産」にあった。
・・・・割賦売掛金売却1,770億円。
昨年度は1年間で206億円しか売却していないから、思いっきりアクセルを踏んでいる。
流動化によって売掛債権が早期回収できるから本来は運転資金にかかる借入金も節約でき、純有利子負債の削減にも貢献している。
シンプルではあるが一石二鳥の効果がある手法だ。
しかし、売上債権の減少は営業キャッシュフローの増加につながる。処理自体は適正であるものの、言葉は悪いが、3Q累計営業キャッシュフロー5,259億円のうち実に3分の1の1,770億円は債権売却で嵩上げしたことになる。これをもって本当に「3期連続過去最高」と言えるのだろうか。
ソフトバンクはボーダフォン日本法人買収資金調達の際に数多くの財務制限条項が付されており、有利子負債、設備投資などさまざまな制約が付されているのは余りに有名な話。ソフトバンクとしてもその制約の中でいろいろ財務上の工夫しているワケであるが( 「少数株主持分及び長期借入金の買戻しによる支出」も涙ぐましい)、割賦債権流動化を有力な資金調達手段とせざるを得なくなっていて、その効果も含めて「過去最高更新だ~」とアピールしているところを見ると、資金事情は言うほど楽ではないかも知れない。
最近、またぞろ孫社長の関連本が出版され、ご本人は意気軒昂といったところなのであろうが、上記のような状況を見るにつけ、裏方の財務・経理部隊は大変だなぁと同情してしまう。
来年度の営業キャッシュフロー、一体どうやって最高額を更新させるのか、今から楽しみである。
孫正義名語録 事を成すためのリーダーの心得100 | |
三木 雄信 | |
ソフトバンククリエイティブ |
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