ポイントだけ書いておくと、ゼネコンへのアクティビストの介入が増えていて、英国の年金運用会社シルチェスター・インターナショナル・インベスターズは奥村組に投資したと。
背景には建設業界固有の3つの事情があったと。
第一に東京五輪による建設ブームでゼネコン各社の利益が回復し、多額の内部留保を抱える企業が増えたこと。
第二に、ゼネコン側に「買収の標的にはならない」という油断があった。建設業界では同業同士で合併すると入札機会がへり、規模追及のメリットがないと考えられてきた。M&A(合併・買収)が進みにくい業界構造が、上場企業なら当然考慮すべき敵対的買収物言う株主への警戒を経営者から失わせた。
第三に、買収防衛策などで敵対的買収者やアクティビストから会社を守りたくても、安定株主がそもそも少ないことがある。
で、こうしたアクティビストらの影響受けて、奥村組がどのような株主還元をしてきたか見てみましょうか。
これは1月2日拙稿「新しい資本主義のリーダーズ 」でご紹介したDSシミュレーターと言うものです。
ある企業が、過去にどれぐらい資金調達してきたか、株主還元をしてきたかといったものを、株価の推移とともに示したグラフです。左軸が資金調達額・株主還元額で単位は億円。右軸が株価で単位円です。
奥村組の場合は、予想通りアクティビストらの要求に対して近年多額の株主還元をやっておりますね。株価はこの後5200円超と10年来高値の水準まで上昇。アクティビストにとっては、してやったりということなのでしょう。
ただ、現状でPBRは1倍以上あり、それでもなお配当利回りが4%以上あるというのは、株主還元としてはもう充分過ぎるレベルかと思いますけれどね。
今後は、過度な株主還元だけに頼らず、従業員・役員、事業法人に帰属する付加価値を重視した経営を考える時期に来たのではないでしょうか。そういう意味では、吉田正尚へのCM投資はブランドイメージの向上と言う点でも良いお金の使い方なのでしょう。
吉田選手がWBC準決勝7回裏に放った起死回生の同点スリーランのように、技ありで胸のすくような企業価値向上策をぜひご提案ください!