◆「財務アナリストの雑感」 2024◆

会計士兼アナリストによる屈指の歴史だけがウリの会計・財務・株式・金融ブログ。異常な経済金融環境を一刀両断!できるかな?

セブン&アイHD もう1つの金融ビジネスに思う

2013-10-07 | 会計・株式・財務
私が昔大変お世話になった小売トップアナリストの方がセブン&アイ分析本を上梓された。
中身をざっと観る限り、氏が得意とする膨大かつ綿密な取材と分析で積み上げられた労作となっており、小売関係者は一読の価値かありかと思った次第であります。

セブン&アイHLDGS.9兆円企業の秘密―世界最強オムニチャネルへの挑戦
日本経済新聞出版社



そのセブンですが、今期第2四半期も好調な決算。3日発表した2013年3~8月期の連結決算は、純利益が833億円と前年同期に比べ25%増え、同期間として過去最高を更新。

しかし、「光あれば影」なのでしょうか。
月刊「選択」10月号では「セブン&アイHD 加盟店「収奪ビジネス」の悪辣」
とまぁ、穏やかではないタイトルでコンビニ会計に係る疑惑をいくつか取り上げております。

詳細は同誌実物で確認頂きたいのだが、1つだけざっくり言いますと、コンビニ特有の会計システム、「オープンアカウント」では加盟店が商品を仕入れたことに伴う負債(コンビニ本部にとっては与信)につき金利を取っているということ。一般的には買掛金は無利子なのに、セブンではここに金利を取っている、なんと悪辣だ!・・・・ってなワケです。
ですので、もう一つの金融ビジネス=オープンアカウントの金利、であります。

しかし、この手の話は昔から出ておりまして新味は全くありません。オープンアカウントの与信に金利がかかることは契約時に説明している(広報センター)とのことでもあり、
廃棄ロス問題ほどの広がりは無いのではないでしょうか。
それでもこじれれば先々のコンビニの収益に大きな影響を与えてしまうかも知れないので、火種になりそうなものは早めに対応しないと・・・・・と思っております。

と、いうのも、今中間期の業績は、見た目ほど良くないと思ったからです。
理由は簡単。

営業利益は前年同期の1,472億円から1,645億円へと+173億円増加しておりますが、そのうち減価償却費の償却方法の変更により141億円、利益が押し上げられております。
従って、純粋な増益部分は30億円程度しかありません。
償却の影響が少ない金融事業の増益幅が43億円、うち償却費の押上げが16億円ですから、ほぼほぼ金融事業の増益で支えられた決算と見ることができる。円安の影響で米国セブンが3千億円以上も増収となっていることなどを考えると、結構厳しい決算だったのではないでしょうか?


「何を言っている!営業キャッシュフローは、物凄く増えているじゃないか!」
とおっしゃるかも知れません。確かに前年の2,545億円から3,112億円へと567億円も増えております。
しかしキャッシュフロー計算書の中身を良く見て下さい。
営業キャッシュフローの中で、「銀行業における預金・社債の純増減」が前期比で565億円も増えております。ほとんどこれで説明がついてしまいます。
(銀行業のデータが財務諸表のノイズになってしまっております。)

消費税増税が決まり、セブンをはじめ小売各社業績にいよいよ逆風が吹くのでしょうか。
今回ご紹介した「影」の部分の動向にも目配せしながら、注意深く業績を見ていきましょう。

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