まずは、日経新聞の記事をご紹介。あれほど問題になったので仕方ないのですが、「泥縄」感は否めません。
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金融庁、のれん代や役員への貸し付け重点審査
2012/4/3 日本経済新聞
金融庁はオリンパスや大王製紙などで不正会計が相次いだことを受け、上場企業の有価証券報告書に不透明な記載がないかを重点的に審査する方針だ。企業買収で発生するのれん代を過大に資産計上していないかや、役員に対する不透明な貸し付けの有無を調べる。同様の不正が再び起こるのを防ぐ狙いだ。
3月期決算企業が有価証券報告書を出し終えた7月から審査を始める。のれん代や関係者向け取引に不透明な点があり、より詳しい調査が必要と判断した企業には追加の聞き取りを実施する。
オリンパスは企業買収で発生するのれん代を過大に計上することで粉飾を隠蔽していた。IT(情報技術)企業がソフトウエア資産などを過少に計上する例も目立っており、金融庁はのれん代などの無形固定資産が不正の温床になりやすいと警戒している。投資事業組合などファンドへの投資が適切に会計処理されているかも点検する。
経営者個人への債務保証や貸し付け、取引先に対する売掛金などの引き当て不足も問題点とみている。有価証券報告書に加えて関係者間の取引の実態も調べ、資金の流れを洗い出す。
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(コメント)
素朴な疑問ですが、『のれん代を過大に資産計上していないか』って、どうやってわかるんでしょうかねぇ?それができればオリンパス問題はここまで酷くならなかったはず。
監査の現場でどういうやりとりが行われているか知る由もありませんが、会社側に「それらしい理屈」を立てられると(たとえば、買収先は業績回復の蓋然性が高く、現時点でののれん減損は不要)、会計士もなかなか反論できないではないでしょうか?
財務情報利用者の立場から言えば、のれんをブラックボックス化するのではなく、金額に重要性があある場合は、有価証券報告書に残高の内訳、および発生原因となった企業の業況がわかる注記を付けて欲しいものです。
イメージとしては、『関係会社の状況』の末尾に記載される、重要性の高い関係会社の収支・財務の開示です。
その業績推移などを見て、財務情報利用者が実態を補正していくしかないのかなと思います。
厄介なことに、IFRS導入の動きは、のれんの過大計上をさらに促す可能性があるということです。
ご存知の通り、IFRSでは、買収後の事業について継続企業として価値が維持される限り、
のれん代は償却すべきでない、という立場。
しかし、実務面では時価の計算方法などで「恣意性が働く」おそれはある。
本来はのれんの減損が必要なケースでも結果的に減損が認識されなかった場合、
「自家創設のれん」の計上を行なったことになる。
(なお最近では、多額ののれんを抱える日本たばこ産業はIFRSを任意適用することで、のれんの定時償却を停止。のれん償却費の減少だけで営業利益はなんと830億円も改善してしまいます(営業利益が2割底上げ)。同社がIFRS導入を急いだ理由は明らかですよね。)
IFRSに関してはまた別途議論したいと思いますが、日本だけでも「のれん」の開示方法のありかたを見直すべきではないでしょうか。
なお、オリンパス・大王製紙問題等を受け、会計士協会も本能的に「こりゃぁまずい」と思ったのか、3月22日に監査・保証実務委員会研究報告第25 号「不適切な会計処理が発覚した場合の監査人の留意事項について」を発出しております。「準備」は整いました。
あとは・・・・期末監査の場面でこの報告書が大いに活用されるような展開にならないことを、ただただ祈るばかりです。
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金融庁、のれん代や役員への貸し付け重点審査
2012/4/3 日本経済新聞
金融庁はオリンパスや大王製紙などで不正会計が相次いだことを受け、上場企業の有価証券報告書に不透明な記載がないかを重点的に審査する方針だ。企業買収で発生するのれん代を過大に資産計上していないかや、役員に対する不透明な貸し付けの有無を調べる。同様の不正が再び起こるのを防ぐ狙いだ。
3月期決算企業が有価証券報告書を出し終えた7月から審査を始める。のれん代や関係者向け取引に不透明な点があり、より詳しい調査が必要と判断した企業には追加の聞き取りを実施する。
オリンパスは企業買収で発生するのれん代を過大に計上することで粉飾を隠蔽していた。IT(情報技術)企業がソフトウエア資産などを過少に計上する例も目立っており、金融庁はのれん代などの無形固定資産が不正の温床になりやすいと警戒している。投資事業組合などファンドへの投資が適切に会計処理されているかも点検する。
経営者個人への債務保証や貸し付け、取引先に対する売掛金などの引き当て不足も問題点とみている。有価証券報告書に加えて関係者間の取引の実態も調べ、資金の流れを洗い出す。
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(コメント)
素朴な疑問ですが、『のれん代を過大に資産計上していないか』って、どうやってわかるんでしょうかねぇ?それができればオリンパス問題はここまで酷くならなかったはず。
監査の現場でどういうやりとりが行われているか知る由もありませんが、会社側に「それらしい理屈」を立てられると(たとえば、買収先は業績回復の蓋然性が高く、現時点でののれん減損は不要)、会計士もなかなか反論できないではないでしょうか?
財務情報利用者の立場から言えば、のれんをブラックボックス化するのではなく、金額に重要性があある場合は、有価証券報告書に残高の内訳、および発生原因となった企業の業況がわかる注記を付けて欲しいものです。
イメージとしては、『関係会社の状況』の末尾に記載される、重要性の高い関係会社の収支・財務の開示です。
その業績推移などを見て、財務情報利用者が実態を補正していくしかないのかなと思います。
厄介なことに、IFRS導入の動きは、のれんの過大計上をさらに促す可能性があるということです。
ご存知の通り、IFRSでは、買収後の事業について継続企業として価値が維持される限り、
のれん代は償却すべきでない、という立場。
しかし、実務面では時価の計算方法などで「恣意性が働く」おそれはある。
本来はのれんの減損が必要なケースでも結果的に減損が認識されなかった場合、
「自家創設のれん」の計上を行なったことになる。
(なお最近では、多額ののれんを抱える日本たばこ産業はIFRSを任意適用することで、のれんの定時償却を停止。のれん償却費の減少だけで営業利益はなんと830億円も改善してしまいます(営業利益が2割底上げ)。同社がIFRS導入を急いだ理由は明らかですよね。)
IFRSに関してはまた別途議論したいと思いますが、日本だけでも「のれん」の開示方法のありかたを見直すべきではないでしょうか。
なお、オリンパス・大王製紙問題等を受け、会計士協会も本能的に「こりゃぁまずい」と思ったのか、3月22日に監査・保証実務委員会研究報告第25 号「不適切な会計処理が発覚した場合の監査人の留意事項について」を発出しております。「準備」は整いました。
あとは・・・・期末監査の場面でこの報告書が大いに活用されるような展開にならないことを、ただただ祈るばかりです。
過年度の比較や、IFRSを適用していない他の企業との比較は、
どのように手当されるのでしょうか?
会計士協会や経済界から、
具体的な話がないように思いますが。