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「四半期報告書廃止へ金商法改正」に思う

2023-11-20 | 会計・株式・財務
日経に「四半期報告書廃止へ金商法改正 これでお金が回るのか」という批判的な解説記事があった。詳細は原文にあたって欲しい。

岸田内閣は「資産運用立国」を掲げ、少額投資非課税制度(NISA)の拡充に踏み切った。市場の活性化を目指すなかで、投資家への情報開示の後退につながりかねない法改正は政策のベクトルが一致しない。
もともとは首相の看板政策「新しい資本主義」の目玉のひとつだったはずだ。四半期の決算と開示が株式市場の短期主義を助長し、長期視点での経営ができないという一部産業界の声を聞き入れた結果だ。
ところが金融界や投資家から強い反対論がわき上がったため、かねて四半期報告書との重複が指摘された短信への一本化が落としどころとなった。政策形成の過程で、短期主義の是正という理念が後退し、企業の負担軽減に論点がすり替わってしまった。


しかし、私はこれでいいと思っている。
私が長らくお世話になっている識者の意見が私だけでなく財務経理の現場の声を見事に代弁していると思ったので、概要をざっくりと紹介する。1年以上前の意見であるが、今回その思いが実現したといっていいだろう。

企業の四半期開示を見直せ 武田雄治氏
四半期開示を続けることに弊害は多い。
①短期の業績目標ばかりが重視され、中長期の戦略的課題が忘れられてしまう問題
②四半期決算に振り回され形式的な開示と簡単な説明しかできず、株主との建設的対話をする時間的余裕が持てないという問題。
③さらに大きな問題は実務の負担。内容がほぼ同じである四半期決算短信と四半期報告書を、多くの上場企業がほぼ同時に開示。重複した同時開示をなぜ金融庁、東証は放置するのか。
④一方で上場企業の情報開示の範囲は拡大。従来の財務情報のみならず、気候変動リスクなどの非財務情報を積極的に開示。情報開示の範囲拡大は、今後も続くであろう。
⑤情報開示の範囲拡大の流れに逆行するように、実務側は働き方改革、リモートワークなどへの対応も迫られ、現場は悲鳴。バックオフィスにもサステナビリティーが必要だということを理解すべき。


現場がより前向きな課題や仕事に取り組める時間を確保できるということだけでも、この制度改正の意義は十分に認められると思うが。
だいたい、元・投融資家の立場からいわせてもらえれば、これまで鮮度の高い四半期決算は短信は読んでも、その後に開示される四半期報告書なんて一体どれだけの人間が読んでいるんだ?といいたい。
こんな当たり前の改正をするにも時間を要してしまうところに、今の日本の問題点が顕れていると思う。

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