DayDreamNote by星玉

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flake89.零下

2019年12月09日 | 星玉帳-Star Flakes-
【零下】


毛羽だった毛布を宿の寝台に広げる。


今宵出航する金星号に乗る人と共に


零下の夜を忍んだ毛布だった。


船の出る時刻。


毛布を身体に巻き付け


窓を開ける。


星の見えない漆黒の宙。


ひと筋の光の尾が遠い宙を横切った。


最後の会話が思い出せず


言葉を交わしたのかさえ思い出せず。


冷気が布を貫き。





flake89『零下』