前向きな毎日を送る

様々な人の影響を受け、色んな言葉に感動をしている日々を忘れないように・・・

金平糖のダンス

2008-03-06 22:58:21 | 感動したこと
本の装丁と題名から、児童文学のようなお話かと思った。
そうではなく大人の本だ。
12話の短編集。

1話「お月さん」を読んであまりの短さに驚いた。
短編集って1話がこんなに短いんだと知り、
一話一話その世界に入っていくのが面倒な気分になった。

3話の「クリームソーダ」はなんとなく懐かしいような世界を感じた。
そして、すぐにその話の世界にどっぷりと浸かっていた。

4話目の「金平糖のダンス」で
ぐしょぐしょな目になった月子のように
私もぐしょぐしょになった。
雪子の本当の気持ちがわかった瞬間だった。

5話目の「キツネノカミソリ」も
きつねおばさんの気持ちの伝わる瞬間があってそこで泪した。
鼻がしゅんしゅんした。


「金平糖のダンス」はその箇所をもう一度読んだら、またぐずぐずした。


(注)ここからは今から読むつもりの方は読まないでください。



(雪子と月子は小学生です)


「金平糖のダンス」
 

 夏休みにほうけていた雪子のところへいきなり月子がやって来たのは、お盆の真っ最中で、ちょうど夏祭りの日だった。
 あの一件以来、月子とひとことも口をきいていなかった雪子は、何を言ったらいいのかわからなくて、黙っておずおずと玄関に出ると、月子もやっぱりぎこちなく下を向いて、濡れるのもおかまいなしにサンダルのつま先で水たまりをかき混ぜていた。
 間に流れたいびつな沈黙を破って、まず口火を切ったのは月子の方だった。
「雪ちゃんにちょびっとだけ話があって、それで来たんよ。遅くに来てごめんね」
今にも消え入りそうな細い声で月子が言うと、大輪の花火が薄墨色の空にはね上がった。雪子と月子は、頭上に大きく咲いた花火を、体を反らして、見た。
 月子は感心して言った。
「雪ちゃんの家は丘の上にあるから、花火がよう見えるんね。うちは屋根に上がっても、あんまり見えん」
 のしかかっていたわだかまりが花火の炸裂音といっしょに溶けて消えていくような気がして、
「花火、見てきな」
 雪子は言った。
 いったん口火を切るや、他の言葉も次いで口から出てきた。
「縁側からだったら、もっとよく見えるよ。白玉だんごもあるし、食べながら、花火いっしょに見よう」
 月子はかぶりを振った。
「お父ちゃん、心配するから、もう帰る。・・・・・

           後略


                                    『お月さん』  桐江キミコ


書いてたらまたグスン。


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