先日読んだ「いいかげんがいい」で、
もう一カ所心を打たれた部分があった。
イラクの避難民キャンプでの出来事だ。
診察を終えてキャンプの中を歩いていると、若いお母さんが、テントに入っていけ
と手まねきする。たくさんの家族が同居するテントでチャイをふるまわれた。
今回の医療ボランティアの旅で、診察をするたび、ヨーグルトを飲んでいけとか、
ジュースを飲んでいけとか、水を飲んでいけとか言われ、断れきれないスタッフたち
が次々下痢に襲われていた。断れないのである。ぼくも飲んだ。人間としてのつき
合いである。でも怖いので半分ほど残して家を出た。
ほかのスタッフが、もう一度その家にうかがいたいと言うので、ぼくも一緒に戻っ
たときのこと。あっと思った。ぼくの残した、砂糖がたっぷり入ったチャイを子ども
たちがまわし飲みしていたのである。貴重品だったんだ。なんとも心が重くなった。
大切なものをくれたのだ。医者として大切にされていると気がついた。
「いいかげんがいい」鎌田實
もう一カ所心を打たれた部分があった。
イラクの避難民キャンプでの出来事だ。
診察を終えてキャンプの中を歩いていると、若いお母さんが、テントに入っていけ
と手まねきする。たくさんの家族が同居するテントでチャイをふるまわれた。
今回の医療ボランティアの旅で、診察をするたび、ヨーグルトを飲んでいけとか、
ジュースを飲んでいけとか、水を飲んでいけとか言われ、断れきれないスタッフたち
が次々下痢に襲われていた。断れないのである。ぼくも飲んだ。人間としてのつき
合いである。でも怖いので半分ほど残して家を出た。
ほかのスタッフが、もう一度その家にうかがいたいと言うので、ぼくも一緒に戻っ
たときのこと。あっと思った。ぼくの残した、砂糖がたっぷり入ったチャイを子ども
たちがまわし飲みしていたのである。貴重品だったんだ。なんとも心が重くなった。
大切なものをくれたのだ。医者として大切にされていると気がついた。
「いいかげんがいい」鎌田實