前向きな毎日を送る

様々な人の影響を受け、色んな言葉に感動をしている日々を忘れないように・・・

このままでよい、ということ

2007-09-04 23:12:22 | 残しておきたい言葉
読んでいてとても気持ちのいい本。

ここのところ2回取り上げた「日日是好日」

作者はクソ真面目という。
私も昔からそういうところがあって
似てるなって思い、
そんなちょっと恥ずかしいようなことを
書いてしまう彼女にまた惹かれた。

中略など入れても結構分量が多くなってしまった。

でも、どこも省きたくないので
ちょっと気になりながら載せてしまいます。


第10章 「このままでよい、ということ」

ところが、それが私の一番苦手なことだった。私は子供のころからクソ真面目で、何でも決まり通りやることで精一杯だった。
全体に気くばりする余裕や、臨機応変に考える柔軟性がない。
自分のことだけを考え、馬車馬のようにわき目も振らず、一本道を走ることしかできない。そうやって30年以上生きてきて、不器用さは私の性格の一部になったていた。
「あら、気くばりなんて学校で習って覚えるようなことじゃなくて、自然に身に付くものでしょ」
などと人が言うのを聞くと、みんなの体にある盲腸が、自分の体にはないかのように感じた。
私はそれを「欠落」と深刻に受け止めた。それが私のコンプレックスだった。クソ真面目の不自由さで、落ち込むときもまっしぐらだった。
気のきく人がうらやましかった。

  ・・・・・中略・・・・・

自分以外のみんなが「機転のきく人」に思えた。もともとお茶を習う人たちは、そういうタイプの人が多いのかもしれなかった。私はしだいに自分を「場ちがい」に感じ始めた。
クソ真面目だから、落ち込んでいる時に注意されると、まともにショックを受けた。

  ・・・・・中略・・・・・

何もかも放り出して、帰りたいような気持ちになった。

  ・・・・・中略・・・・・

それから何日もふさぎこんだ。

  ・・・・・中略・・・・・

茶碗から顔を上げた時、私の細胞の間を何かがサーッと通り抜けたような気持ちの良さがあった。後味で、唾液までとろりと甘い。

(なんて幸せなんだろう)

お手前をしまいつけ(片付けること)雪野さんが立ち上がって障子戸を開けた。すると、廊下の向こうのガラス戸越しに、底の抜けたようなカランとした空が見えた。高く高く吸い上げられてしまいそうな気がした。

(はーっ、気持ちいい)

その空に向かって、深呼吸と一緒に自分をとき放した。
その時、自分の中で声がした。

「このままで、いいじゃないか」

「え?」

「いつやめても、かまわない。ただ、おいしいお茶を飲みにここに来る。これまでだって、ずっとそうだった。そのままで、いいじゃないか」

自分の中から聞こえるのに、空から降ってきたみたいだった。

「やめる」「やめない」なんてどうでもいいのだ。
それは、「イエス」か「ノー」か、とはちがう。ただ「やめるまで、やめないでいる」それでいいのだ。
「そうだ、気がきかなくてもいい、頼りにならない先輩でいい、自分を人と比べない。私は私のお茶をすればいいのだ」
背負っていた重荷を、私は放り出した。ふっと肩の力が抜けて身軽になった。私は体一つで、そこにいた。

「なあんだ!これでいいのか」

                                  「日日是好日」 森下典子


(中略のところにもいいエピソードが散りばめられているので
略してしまってもったいないのですが・・・)


ふっと肩の力が抜けて身軽になる。
まさにそんな気分。
爽快な気分。

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