読んでいてとても気持ちのいい本。
ここのところ2回取り上げた「日日是好日」
作者はクソ真面目という。
私も昔からそういうところがあって
似てるなって思い、
そんなちょっと恥ずかしいようなことを
書いてしまう彼女にまた惹かれた。
中略など入れても結構分量が多くなってしまった。
でも、どこも省きたくないので
ちょっと気になりながら載せてしまいます。
第10章 「このままでよい、ということ」
ところが、それが私の一番苦手なことだった。私は子供のころからクソ真面目で、何でも決まり通りやることで精一杯だった。
全体に気くばりする余裕や、臨機応変に考える柔軟性がない。
自分のことだけを考え、馬車馬のようにわき目も振らず、一本道を走ることしかできない。そうやって30年以上生きてきて、不器用さは私の性格の一部になったていた。
「あら、気くばりなんて学校で習って覚えるようなことじゃなくて、自然に身に付くものでしょ」
などと人が言うのを聞くと、みんなの体にある盲腸が、自分の体にはないかのように感じた。
私はそれを「欠落」と深刻に受け止めた。それが私のコンプレックスだった。クソ真面目の不自由さで、落ち込むときもまっしぐらだった。
気のきく人がうらやましかった。
・・・・・中略・・・・・
自分以外のみんなが「機転のきく人」に思えた。もともとお茶を習う人たちは、そういうタイプの人が多いのかもしれなかった。私はしだいに自分を「場ちがい」に感じ始めた。
クソ真面目だから、落ち込んでいる時に注意されると、まともにショックを受けた。
・・・・・中略・・・・・
何もかも放り出して、帰りたいような気持ちになった。
・・・・・中略・・・・・
それから何日もふさぎこんだ。
・・・・・中略・・・・・
茶碗から顔を上げた時、私の細胞の間を何かがサーッと通り抜けたような気持ちの良さがあった。後味で、唾液までとろりと甘い。
(なんて幸せなんだろう)
お手前をしまいつけ(片付けること)雪野さんが立ち上がって障子戸を開けた。すると、廊下の向こうのガラス戸越しに、底の抜けたようなカランとした空が見えた。高く高く吸い上げられてしまいそうな気がした。
(はーっ、気持ちいい)
その空に向かって、深呼吸と一緒に自分をとき放した。
その時、自分の中で声がした。
「このままで、いいじゃないか」
「え?」
「いつやめても、かまわない。ただ、おいしいお茶を飲みにここに来る。これまでだって、ずっとそうだった。そのままで、いいじゃないか」
自分の中から聞こえるのに、空から降ってきたみたいだった。
「やめる」「やめない」なんてどうでもいいのだ。
それは、「イエス」か「ノー」か、とはちがう。ただ「やめるまで、やめないでいる」それでいいのだ。
「そうだ、気がきかなくてもいい、頼りにならない先輩でいい、自分を人と比べない。私は私のお茶をすればいいのだ」
背負っていた重荷を、私は放り出した。ふっと肩の力が抜けて身軽になった。私は体一つで、そこにいた。
「なあんだ!これでいいのか」
「日日是好日」 森下典子
(中略のところにもいいエピソードが散りばめられているので
略してしまってもったいないのですが・・・)
ふっと肩の力が抜けて身軽になる。
まさにそんな気分。
爽快な気分。
ここのところ2回取り上げた「日日是好日」
作者はクソ真面目という。
私も昔からそういうところがあって
似てるなって思い、
そんなちょっと恥ずかしいようなことを
書いてしまう彼女にまた惹かれた。
中略など入れても結構分量が多くなってしまった。
でも、どこも省きたくないので
ちょっと気になりながら載せてしまいます。
第10章 「このままでよい、ということ」
ところが、それが私の一番苦手なことだった。私は子供のころからクソ真面目で、何でも決まり通りやることで精一杯だった。
全体に気くばりする余裕や、臨機応変に考える柔軟性がない。
自分のことだけを考え、馬車馬のようにわき目も振らず、一本道を走ることしかできない。そうやって30年以上生きてきて、不器用さは私の性格の一部になったていた。
「あら、気くばりなんて学校で習って覚えるようなことじゃなくて、自然に身に付くものでしょ」
などと人が言うのを聞くと、みんなの体にある盲腸が、自分の体にはないかのように感じた。
私はそれを「欠落」と深刻に受け止めた。それが私のコンプレックスだった。クソ真面目の不自由さで、落ち込むときもまっしぐらだった。
気のきく人がうらやましかった。
・・・・・中略・・・・・
自分以外のみんなが「機転のきく人」に思えた。もともとお茶を習う人たちは、そういうタイプの人が多いのかもしれなかった。私はしだいに自分を「場ちがい」に感じ始めた。
クソ真面目だから、落ち込んでいる時に注意されると、まともにショックを受けた。
・・・・・中略・・・・・
何もかも放り出して、帰りたいような気持ちになった。
・・・・・中略・・・・・
それから何日もふさぎこんだ。
・・・・・中略・・・・・
茶碗から顔を上げた時、私の細胞の間を何かがサーッと通り抜けたような気持ちの良さがあった。後味で、唾液までとろりと甘い。
(なんて幸せなんだろう)
お手前をしまいつけ(片付けること)雪野さんが立ち上がって障子戸を開けた。すると、廊下の向こうのガラス戸越しに、底の抜けたようなカランとした空が見えた。高く高く吸い上げられてしまいそうな気がした。
(はーっ、気持ちいい)
その空に向かって、深呼吸と一緒に自分をとき放した。
その時、自分の中で声がした。
「このままで、いいじゃないか」
「え?」
「いつやめても、かまわない。ただ、おいしいお茶を飲みにここに来る。これまでだって、ずっとそうだった。そのままで、いいじゃないか」
自分の中から聞こえるのに、空から降ってきたみたいだった。
「やめる」「やめない」なんてどうでもいいのだ。
それは、「イエス」か「ノー」か、とはちがう。ただ「やめるまで、やめないでいる」それでいいのだ。
「そうだ、気がきかなくてもいい、頼りにならない先輩でいい、自分を人と比べない。私は私のお茶をすればいいのだ」
背負っていた重荷を、私は放り出した。ふっと肩の力が抜けて身軽になった。私は体一つで、そこにいた。
「なあんだ!これでいいのか」
「日日是好日」 森下典子
(中略のところにもいいエピソードが散りばめられているので
略してしまってもったいないのですが・・・)
ふっと肩の力が抜けて身軽になる。
まさにそんな気分。
爽快な気分。