若かったころ父が 「会社へ若い画学生が絵を売りに来よった。
苦学生みたいだし、安かったしパリで勉強するためというから一枚買うた。」
と安物の灰色の額に入ったペラペラの感じの水彩画を持ち帰ってきました。
絵の善し悪しは判らなかったけどその頃の絵にしては色数少なくおしゃれな感じがしたのは覚えています。
「パリ」という言葉に惹かれ、私はその絵をもらって部屋の隅にかけていました。
なんとなく私好みの絵・・という印象で何十年も毎日眺めていたその絵には
nomiyama 1953 というサインだけ。
ところが1カ月ほど前にテレビが「久留米の石橋美術館でノミヤマ・・展」と宣伝して
もしや・・と見にいったら、立派な大きな油絵がたくさん展示されていました。
その人は今93歳で今回が多分最後の展覧会になるだろうとのこと。
出征した頃の暗い色合い、戦後の殺伐とした画像、
だんだんグレーを基調に黒白そして赤色が加わるようになり
だんだん抽象的な独自の画風に変わって行く・・
なんとなく一人の画家の最初と最後に付き合った感じで
苦悩を秘めた人生の深さを感じた一日でした。
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(題名 待ちぼうけ)
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(題名 かけがいのない愛)