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広瀬正と星新一

2021年07月25日 | 日記
広瀬正はSFやミステリを書いた作家。生年は星新一に近く、「SF第一世代」に数えられるのだろう。直木賞候補に三度もなるなど、作家として盛りだった時期に、40代で急逝した。没後に河出書房新社から出た全小説集が、集英社文庫に入り、これが多分二度改版だか新装だかされている。二度目は2008年なので、過去の作家、忘れられた人、というわけでもない。

それでもこの人もっと読まれていい、もっと有名でもおかしくない。読んでみてそう思う。理数系の鋭い思考力と巧みな小説の腕前とが無理なく融合していてすばらしい。「マイナス・ゼロ」に込められた熱量には圧倒されるし、「鏡の国のアリス」の鏡像の解説もみごとだ。

ただ、「鏡の国のアリス」もそうだが、長編小説のタイトルのつけ方に難がある。「ツィス」も「エロス」ももっと魅力的な題にすればよかったのに。星新一も、河出の「マイナス・ゼロ」の解説文で、広瀬は題名で損をしていると書いていた。

星新一は、文壇デビュー前の広瀬の掌編「もの」を激賞したという。しかし、先の文章は全体にどうも歯切れがわるい。星は広瀬に心理的な距離を置いていたように思わされる。戦前の東京の描写へのコメントなどから察するに、広瀬正の才能に星新一は嫉妬をおさえられなかったようだ。


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