午前八時半。
東京・羽田空港、第2旅客ターミナル。
「正直言って、独身とは言え、五十になって転勤はホント厳しいすよ」と彼。
離陸も迫った時間だったので、セキュリティゲート前は混雑が始まっていた。
家族がいて一緒の転勤なら、気分もまた違っただろう。
「福岡じゃ遠隔地のうちには入らないよ。普通に週末に帰って来られるじゃないの」とぼく。
「そうすね。でも寂しいすよ」と言って彼は小さく笑った。
*
ゲートの向こう ----- 人混みに紛れて見えなくなる寸前、彼は振り向くと右手を高く上げ、
「アディオス・ムチャーチョス!」と叫んだ。
アディオスのアクセントが『オ』にある。そう言えば彼は、大学はスペイン語学科だったっけ...。
日本語で言うのが照れ臭かったのだろう。
アディオス・ムチャーチョス! ----- 友よ、さらばだ!
George Martin and His Orchestra / This Boy
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