きみの靴の中の砂

少女がパン屋の店先に姿を見せようかという朝の時間

 

 

 イチ子さんの今月は、フランスで取材。画家でエコール・デ・ボザールの学生でもある女友達のパリのアパルトマンを頼って、モンマルトルでひと月に渡り滞在中。

                    

 アパルトマンの筋向かいには伝統あるパン屋。

 イチ子さんがパリに着いてこの方、年の頃なら十二、三歳の、金色の髪が朝日に美しく映える少女が、毎日早い時間にパンを買いに来るとメールにあった —— イチ子さんが階上の窓辺に起き抜けのカフェ・オ・レを飲む頃、その少女は現れるという —— メールに添付された写真には、友人が描いたという朝のパン屋の店先の絵。

 壁の時計に目をやれば、東京は午後二時。パリとの時差は東京がプラス七時間。モンマルトルでは、そろそろ例の少女がパン屋の店先に姿を見せようかという朝の時間である。

 

 

 

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