久し振りに映画『秋津温泉(1962)』を観る。
この作品のモチーフ —— 『男の煮え切らない・優柔不断な性格が災いし、十七年という永きにわたり静かに燃え続け、遂に成就することなく破滅へと向かう愛』。
原作者は、直木賞作家・藤原審爾(ふじわら・しんじ) —— 受賞作は昭和二十七年・上期の『罪な女』 —— その年の直木賞選考委員会はもめにもめた。委員のうちの何人かが「今さら、(藤原の)こんな作品(『罪な女』)に直木賞をやるくらいなら、なぜ、(藤原の)昭和二十四年(候補作)の『秋津温泉』に芥川賞をやっておかなかったんだ!」と言って退席してしまったという。
芥川賞に五回もノミネートされながらとうとう受賞出来なかつた川上宗薫が、純文学をあきらめてポルノ小説を書き始めた事にも似て、藤原審爾も『秋津温泉』で芥川賞を逃して以来、純文学から遠ざかり、生活のために少女小説や『どうでもいい』ような大衆小説を書いて暮した。
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カラー。シネマスコープ。松竹オールスター・キャスト、文芸超大作『秋津温泉』は、62年前の初夏、松竹系劇場にて全国一斉公開。
【"The Affair at Akitsu" - Trailer】