きみの靴の中の砂

虹と白砂に彩られた、どこか遠い国

 

 

 風邪をひいたことにして、夏休みの部活を休んだ。いや、サボった。

 水泳部は —— 熱さえなければ —— 風邪は泳いで直してしまうのが常識だから、今日のこの風邪らしきものには『微熱らしきもの』も出ていないことには辻褄が合わない。

                    

 昼下がり、自室の畳の上で大の字になって寝ていると、開け放った窓越しに庭から同級生で同じクラブの水口イチ子の声が聞こえてきた。
 部活帰りに『不肖な息子』を見舞ってくれたことを母親が縁側から礼を言っている。

「ちょっと出てらっしゃい! イッちゃん来てるわよー」と母の声。

 イチ子と母の話題は、高校最後の夏と進路。
 イチ子は潑剌とした声で、『虹と白砂に彩られた、どこか遠い国』をいつか旅するのだと熱く語っているのが聞こえる。

 

 

【松尾清憲 - 愛しのロージー】
 
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