きみの靴の中の砂

随分長い間疑うことはなかった

 

 

 水口イチ子は、以前から自分の背が高いことを気にしていた。例えば雑踏で他人の視線に曝されるときなど、彼女には、それをことさら気にする様子がうかがえた。

 

 そんな時だ、少しでも背を低く見せようと、屈み加減に少し背中を丸めるという悪い癖が出るのは...。

 

 そんなこともあって、彼女が踵の高い靴を履いたのをこれまで見たことはなかったし、ロウ・ヒールの靴しか持っていないのだとぼくは随分長い間疑うことはなかった。

 

 ところが今、目の前で「お待たせしました」と笑うイチ子の足もとにはハイ・ヒール。それに加え、服装もシンプルではあるがHipな色使いで、以前にも増して晴れやかなチョイス —— だから、とりわけ目をひく。

 

 水口イチ子は、なぜにイメージを変えるに至ったのか。

 

 

 

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