きみの靴の中の砂

ロラン・バルトの『喪の日記』





 やがて、ひとつのアイデアが形になり、短い文章になる。

 仮に、それが形をなすまでにいくらか時間を必要とする場合、別なものが先を越していくことはよくある。しかし、メリケン粉がだまになるように凝り固まるアイデアもたまにあって、そういうものの中には、別なものが先を越していくことを許さないものがある。

 ロラン・バルトの『喪の日記』 ----- 本書は、彼が母を失った翌日から二年間にわたり、三百枚有余のカードに書き込まれた断片集である。欧米と日本の『母と息子』の関係の大きな差異が見える。民族性の違いだと片付けられるだろうか。
 バルトの二年という長きにわたる『喪』の悲しみは、日本人の死生観に照らし合わせ、どのように整理し、どのように受け止め、どのように理解すればいいだろう。

 ここしばらく、この本のおかげで、なにかしら書こうと努力はするものの、嬉しい結果はやってこない。




The Walker Brothers / Make It Easy On Yourself (涙でさようなら)


 

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