卒業アルバム制作委員のイチ子さんが、自分の写真を写しそびれているから撮って欲しいと、ぼくに重いデジタル一眼を押し付けてきた放課後、ふたりで校舎の屋上に出た。
何枚か写した後、イチ子さんが、
「ちょっとだけピントを甘くしてソフトフォーカスで撮ってみて」と言う。
そのうちの一枚がこれ。
いい笑顔だったので、ちゃんとピントを合わせてもう一枚欲しかったけれど、彼女が撮られるのを意識したせいで、同じ笑顔は次の場面では叶わなかった。
「写されるのって、やっぱり、あたしには向いてないのかも」と言って、彼女はクスクス笑うのだったが...。
【Christie - Yellow River】
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