きみの靴の中の砂

象を食べる

 

 


 大人数でBBQをした後、なぜかみんな一斉に帰ってしまい、後片付けを自分ひとりですることになったらどうするか —— 食器はすべてハードウェアで使い捨てのモノは何もないとします。

 まず、庭の端に立ち、二十メートル四方に散らかった狼藉の跡を見る。後片付けの未経験者は途方に暮れます。食器を全部洗って、拭いて、キャビネットに元どおりに収納し終わるまでには、誰がやってもそれ相当の時間はかかります。しかし、その手の作業に慣れている人は呆然とすることは滅多にありません。なぜでしょうか...。それは、簡単なコツを知っているからです。ポイントはたったひとつ —— 現場をあまり広くを見渡さず、手近なものから鼻歌でも歌いながらコツコツと地道に片付けていく —— たったこれだけのノウ・ハウです。
 俯瞰で広く見渡していればいいのは、自分では手を下さない、もっと立場の偉い人がすることです。

 勉強とか、研究とか、執筆とか、自分ひとりで行う作業は散らかった食器を片付けることに似ています。

 北欧の世界的に有名な、あるビジネス・コンサルタントのマニュアル・ブックの一項に『象を食べる』というのがあります(それは前述の食器を片付けることの言い換えです)。つまり、目の前に置かれた象を好きなように調理して食べなさいと言われたらどうしますか、という問題です。もちろん、食材は腐敗しない前提で、あらゆる炊事道具・調味料はすべて揃えてあります。食べ飽きるのは想定外とします。

『毎日、毎日、毎食、毎食、ひたすら象一頭の完食を目指し、日々、少量でもいいのでモクモクと食べ続けるのが唯一の方法』と説きます。

                    

 愛情も同様に毎日休むことなく、ティースプーン一杯程度を地道に注ぎ続けるのが良いようです。

 

 


【The Bunnys - I Believe】

 

 

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