八ヶ岳が目の前に大きくそびえて見える、千メートル林道下の伯母の夏の家を借りて、ある年、イチ子と過ごしたことを同じ季節が近付く度によく思い出す。 イチ子は、伯母のウインザー風の古いテーブルセットが気に入り、霧の晴れた日差しのある午後は、庭によく持ち出してお茶などしていた。 きみが落葉松林の中へ踏み入って摘んできては、いつもテーブルに飾っていた、あの黄色い花の名を今はもう思い出せないけど。