水口イチ子は、今時の女子にしてはめずらしく洋装ができた。それは、生前同居していた祖母に仕込まれたと聞いた。
中学生になると、イチ子は祖母に連れられ、生地屋のクリアランスセールで端布を買い集め、夏のワンピースやカジュアルなスカートの多くを自作したという。
多少洋装が出来る人が見ると、手作りか既製服かは一目瞭然らしく、年配の婦人から「あら、ご自分で縫われたの」などと声を掛けられているのを何回か見たことがあった。
この夏は、カタルーニャの画家ミロの絵に似た色使いの生地で縫ったミディスカートが気に入ったようで、よく着てたっけ。