きみの靴の中の砂

都会の片隅で時間を止めていたかのよう





 休日の夕方、ふたりで出かけたウエストゲートパーク。

 大分傾いた西日がスポットライトのように当たっている自分の足もとを見ながら、
「このミュールも、そろそろ履き納めね」とイチ子さんが言う。
「そのペディキュア、きれいに塗れてるけど、ネイル屋さんで塗ってもらったの?」とぼく。
「そ。爪を見せるのも次の春までないかと思ったら、なんだか急にちゃんと塗ってみたくなっちゃった」と大学生だった頃のような口調で彼女が言うものだから、ぼくも携えていた古いブロニカで急に彼女の素足を撮りたくなった。

                            

 池袋の街の風景は、ふたりが大学生だった頃とは大きく変わってしまったけれど、この公園だけがあの頃のまま、都会の片隅で時間を止めていたかのようだ。そしてイチ子さんも又あの頃のまま、少しも変わっていないとぼくには思えるのだった。




Ringside / Criminal


 

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