きみの靴の中の砂

そんな予感もひと際な朝

 

 

 春分の日も近い、とあるいち日のはじまりの時間...。

 夜明け頃に通り過ぎた驟雨は、舗道の陽向で陽炎になり、道行く人波に揺れる。

 アメリカヤマボウシの並木道の向こう側、『メイフェア』という名のベーカリーの若夫婦が、ふたりして夜中に仕込んだパン生地を朝イチで焼けた窯から出し終え —— 砂糖とたっぷりのミルクを注いだ紅茶で —— 一息つくのもこの時間。

「毎年、暖かくなって来ると、なぜかパンがよく売れ出すんですよ」と店主が不思議がっていたのは、つい先日のこと。誰とはなしに陽気に誘われ、公園のパーゴラの下でランチでも企てようというのか。

 新しい季節が一気に押し寄せてくる...。そんな予感もひと際な朝。

 

 

 

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