きみの靴の中の砂

ご苦労様と言うべきか





 庭のほぼ真ん中に大きく枝を広げる種類不明の大木がある。

 ある時、庭の手入れに来た植木屋の爺さんに名称を尋ねたことがある。
 そりゃあ名のない樹などないから名前はあるだろうけど、普通庭木として植えるような木じゃないからわからないと言う。言ってみれば山に生えてる木、雑木だと言う。まぁ、それもいいだろう。

 武蔵野には雑木がよく似合う。

 それ以来、名前の詮索は止めたが、未だ気にならないことはない。そもそも野鳥の糞から育ったようで、配置など相談されたこともないまま、気づいたら二階の屋根よりも高くなってしまった。
 今、この季節は、蝉の集合住宅のようだ。

 土曜日の今日、自粛ということで外出もせず、自宅でちんまりとお盆休みに入った人も多い。うちの庭の謎の大木で鳴く蝉には自粛などまったく関係なく、自由に鳴いていられてうらやましいこった。もっとも蝉にとってみれば、この時期に鳴くのはまさに運命であって、不要不急のことではない。ご苦労様と言うべきか。




【曽我部恵一BAND / オレと彼女が晴れた日の午後に笑うささやかだけれど絶対的な理由】


 

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