演劇集団キャラメルボックス『我が名は虹』

演劇つながりと言うことで、少し前にシアテレで見て
いつか書こうと思っていた『我が名は虹』の感想を

舞台は新撰組が活躍する幕末の京都。
旅篭で下働きをしている浪人・鉄（菅野良一）は、青葉（實川貴美子）という
少女に出会う。青葉は、小田原藩を辞め岡山で仕官の職に就くことになった父について
姉と共に岡山へ向かう途中だったが、小田原藩で罪を犯し今は黒江と名乗り新撰組の
隊士となっていた平松（岡田達也）に父と姉を殺される。
父と姉の仇討ちを決意した青葉は、鉄の友人・亥三郎（細見大輔）に剣の手ほどきを
受け仇討ちを実行しようとするも、逆に亥三郎が傷を負い、新撰組に捕われてしまう。
何とか一人逃げ出した青葉だったが、亥三郎の恋人・えん（岡田さつき）に
亥三郎を見捨ててきたことを責められ、一人新撰組の屯所へ亥三郎を助けに戻る。
それまで戦うことを避け続けてきた鉄だったが、青葉が一人で亥三郎を助けに
行ったことを知り、臆病な自分を奮い立たせるように二人を助けに向かう。
何とか三人で旅篭まで逃げ延びたが、そこには黒江が自分の過去を知る青葉を
始末しようと先回りしていた。
青葉の剣の腕では黒江にかなうはずもなく、亥三郎は深手を負っており、苦戦を
強いられる青葉たちだったが、そこで鉄が黒江に刀を向ける。
彼の本当の名は、以蔵。人斬り以蔵と怖れられた男…

以前見た『TRUTH』も時代劇だったし、新撰組ものももういいかなぁという感じ
だったんだけど、シアテレの“視聴者リクエスト”企画第1位作品と言うので
ちょっと見てみるかぐらいの軽い気持ちで見始めた『我が名は虹』

予想に反して（失礼！）ものすごく感動しました
特に菅野良一さん演じる鉄がとても印象的
物語の前半の鉄は、優しいけれど本当に臆病で頼りなく情けない男。
菅野さんの弱々しい男ぶりがハマっていて、だからこそ終盤、
黒江と対決するときに見せる以蔵としての冷徹さと狂気が際立って、
なんとも迫力がありました

人斬り以蔵と怖れられ、人を斬ることに何の迷いもなかった以蔵。
ある時から、死ぬと言うことに恐怖を覚え、刀を持つことが出来なくなり、
殻に閉じこもり嵐が過ぎ去るのをじっと待っていました。
しかし、青葉と出会い、再び刀を手に戦いに身を投じたとき、
本当は自分が嵐であったのだと言うことに気が付くのです。
終盤のこのシーンが本当に切なく、心に残りました

今まで“岡田以蔵”＝“人斬り以蔵”ぐらいの知識しかなく、とりわけ興味も
なかったんですが、この舞台を見て、本当の以蔵はどんな人だったのか
興味が湧き、あちこちHPなどを巡って見つけた彼の辞世の句－

君が為　尽くす心は水の泡
消えにし後は　澄み渡る空　　

暗殺の道具として利用され、人を斬り続けた以蔵。
最後にはこのお芝居のように、嵐が過ぎ去り虹が出た空を見上げることが
できたのでしょうか