
雨が止んだら風が出て来ました

息子の学生時代友人の親御さんから 和歌山で脱サラされて農園をしています
足踏みしていた季節がここにきて一気に動き出した。
遅かった紅葉も色を変えることなく夜来の風雨で落ち葉になって
丁度良い季節は呆気なく過ぎてしまう。
寒い試練の季節がやって来た。
人間も自然界も試練の季節を経るたびに逞しくなっていく。
桟橋で身構えながら西風に堪え 乗船客に悟られないよう
踏ん張って立っている。
季節風が吹き始めると船を越す波は容赦なく 横波を受けると一溜りも無い。
大きな波を乗り越えるように舵を切りウワアウワアと叩きつけられる度に声を出していた。
島に住む人達にとっては生活の足 病院通いや街に住み中高に通う寮生の帰宅と
無くては成らない足となっている。
大師堂の当番月 最後のお掃除に出掛けた。
夜来の風雨に散った葉が箒に掛かりにくい
眼前の海は今朝よりも一層時化てきた うねる音が風の音と相まって
強まってきている。鳥たちは呑気なものである。
幾度となく入退院を繰り返して逝った義父。
手術の成功を祈って大師堂に籠り念仏を唱えてくれた海辺の町の女性達。
人生の節目には家族の安寧を願ってお参りしていた。
賑やかだったあの頃が嘘のように静まりかえって
掃き清めた後の清々しさを身体で感じながら大師堂を後にした。