ひかわ玲子の(株)小学館キャンバス文庫での《クリセニアン年代記》シリーズにはガッカリしました。何故かというと、アルジェリックが《魔法神殿》の言いなりになって、フェランの元を去ってしまったからです。それがショックで手持ちの《クリセニアン年代記》シリーズ全巻を古本屋に売り飛ばしました 当然ですよ。そのフェランの息子フェラザードが主人公の、《クリセニアン年代記》シリーズの続編『クリセニアン夢語り(1) エル・デオの眠れる王に』が発売されると知って“書かんでいい!そんなモノは!!”と心の中で叫んだのは私です。
それにしても、フェランが主人公だった前回のシリーズが《クリセニアン年代記》で、今回のフェランの息子フェザンが主人公のシリーズが《クリセニアン夢語り》ならば、《クリセニアン》シリーズの「年代記」編に続く第2弾「夢語り」編でしょうか
この《クリセニアン年代記》シリーズで大嫌いなキャラは主人公フェラン(フェラベリート・ラズ・オルフェ)に自分が継ぐべきエルミネール王国の王位を押し付け、自分はエルメールで後のリンバーグ皇后ラリッサと乳繰り合い、不義密通を犯した厚顔無恥な罪人のくせに楽隠居の怠惰を貪る愚兄ジーク(ジークラード)です。『クリセニアン年代記(4) 月影の暗殺者』で、剣に塗られていた毒のせいで倒れたフェランをアルジェリックが癒している間、フェランは夢の中で、幼い頃、亡命する途中の山越えで山賊の棲み処に迷い込んでしまった時、ジークが囮になって山賊を誘き寄せ、その隙に助けを呼びに行く途中で凍りつくような恐怖をフェランが味わったことをジークは知らぬまま、『クリセニアン年代記(9) 緋の逃避行』での回想で、自分だけがフェランを失ったらどうしようと悩み、フェランは知らない自分だけの苦悩と恐怖だと思い込んだ独白に呆れました。
嘗て、エルミネール王国がバハウ帝国…というよりも、シャリザーンによって滅ぼされた時、我が身をケダモノどもの餌食にしてでも我が子を守るのが母として当然なのに、その責務を放棄して自己防衛のために自刃し、フェランとジークを見捨てたミルデラーテの弱さと身勝手さが容貌と共にジークに受け継がれてしまったのです。愚かなのは己に似すぎていても男ならば無事に済むだろうと思ったミルデの甘さです 尤も、男でも無事では済まないと気付かれたら道連れにジークを殺していたでしょうから、間抜けな女 で良かった。
ジークは作者の思惑とは異なる意味で王位に就かなくて良かったのかもしれません。本当の不幸とは、自分が不幸だと思い込むことであり、ジークの不幸とは、まさに自分が不幸だと思い込んで、不幸に酔いしれ悲劇の主人公を気取っているのです。しかも、『エル・デオの眠れる王に』の中で、疫病神ラリッサ皇后に対して“セリシア皇姫をエルミネール王国の王太子フェザン(フェラザード)の許へ輿入れ”ならばいざ知らず、あろうことか“降嫁”という言葉を使ったジークに呆れた エルミネールはリンバーグの属国ではないぞ バカ兄が
リンバーグ側はこう言うだろう、という意味で言ったのかもしれませんが、卑屈なジークの本性と亡き女皇ゼルミナの庇護下にあったせいで、ジークは骨の髄までリンバーグの国益になるようにとエルミネール王国よりもリンバーグのためになることばかり無意識に考えるように洗脳されたも同然で呆れるより哀しい