イリアーデの言霊

  ★心に浮かぶ想いのピースのひとかけら★

イック(No.19) -02

2013年06月03日 23時44分30秒 | 高橋美由紀

潜みに徹して「UB」に尻尾を掴ませなかったローが動き始めた折、篠塚がローを捕縛すると同時に自らの死を偽装し慎悟を捨てる計画を立てたことを知らされ、その悪辣な計画に内心猛反発して慎悟や束の間のクラスメイト達に対する友愛から苦しんだ。指示された通りに森田と佐野を篠塚の死の証人とすべく慎悟のいるS県の山奥に誘導し、課せられた役割を果たすもその表情は苦悶に満ちていた。両親と親友を失い深く傷ついている慎悟に対し、篠塚が自身の爆死を偽装して彼を捨てたことに改めて疑念を抱く。部下にその後の慎悟の動向を監視するよう指示して任務で渡米した篠塚に同行しつつ彼をずっと案じており、この時点での危険人物である篠塚には慎悟の情報をシャットアウトして彼を守った。深く傷つき友人達との付き合いを一切止めてしまい、事情を知る森田と佐野を除くクラスメイトの心証を著しく悪化させても一顧だにしない慎悟の姿に心を痛め、篠塚と自分達の罪を噛み締めていた。

1年後の冬の「UB」絡みの事件で慎悟に再会し、いや増すばかりの愛ゆえに篠塚の生存と彼女自身による「爆死偽装」の真相を確信し苦しむ慎悟を励まして旅立ちを促し、更に1年後に骨休めに帰京した慎悟に“灯台下暗し”と告げNo.77に篠塚の居場所をそれとなく教えるように指示し渋谷に誘導した。やがて「Ω(オメガ)」のメンバー達と邂逅した慎悟が任務終了ギリギリで篠塚に接触を図ろうとしたのに合わせ、手榴弾から篠塚を守ろうとした慎悟を密かに助けて彼の死を偽装し篠塚を罠に嵌めた。2年前のススキの高原に彼女を連れ出して密かに同行させた慎悟の前で彼を愛していることを自白に追い込み、遂に篠塚に慎悟と共に生きる決意をさせるに至る。慎悟の“死”に壊れ始めて正常な判断を下せずにいる篠塚の姿に心を痛め、彼女自身のためにも慎悟のためにも慎悟の愛を受け入れて乗り越える以外に2人に救いはなく、篠塚の精神的安定のためには慎悟が必要不可欠だと確信しての行動だった。

過酷な任務の連続で凍てついた篠塚の心を慎悟が溶かし、恋から愛へと急速に成長してゆく彼の想いが篠塚の心を温めて彼女に初めて微笑みを浮かべさせたのを見て、慎悟は篠塚に無くてはならない存在だと悟ったのだった。当初はそれすらも自分達「UB」の崇高なる使命の足元にも及ばない塵芥と看做し、クラスメイト全員が味方であり亡き親友に準ずる森田と佐野の存在が、篠塚の去った後の心の隙間を消滅させるだろうと慎悟の想いを侮ってもいた。しかし、篠塚が彼を捨てた際、既にその考えが間違っていると自覚しており“愛に代わりは無い”という人間として当たり前の境地に至る。篠塚にそんなつもりはなくとも、彼女が慎悟にした仕打ちは“身も心も弄んだ娼婦の悪行”なのだと悟っていた。


最新の画像もっと見る