ネコのひたい

暴力ネコと映画、写真、音楽を楽しんでます。

ベニスに死す

2007-10-05 16:48:07 | 映画・舞台
結構、長文を書いて下書き保存してたのに・・・。
全部、消えてました。

気をとりなおしまして・・・
ヴィスコンティの名作ですね。
今回はDVDでの鑑賞ですが、最初から最後まできっちり観たのは初めてです。
10代の時にテレビで放映してるのをチラっと観たのですが、その時は多分、退屈な映画だと思ったと思います。
でも、今回数十年ぶりに観て、自分でも驚いたのですがラストで号泣してしまいました。
この映画の感想を色んなサイトさんで拝見したのですが、若い頃に見た時と、ある程度の年齢になって観た時では感想が変わってる方が沢山いらして、自分と同じなんだぁとホッとしました。^^;


以下ネタバレです。


ストーリーですが、高名な音楽家のアッシェンバッハが静養先のベニスで美しい少年タージオに心を奪われます。タージオもアッシェンバッハの気持ちを知っていて、わざと翻弄するような態度をとるんですね。
でも、二人が言葉を交わすことは最後までありません。

このアッシェンバッハのタージオに対する態度が今でいうストーカーみたいで、見ててこちらが恥かしくなるくらいバレバレなんですね。
タージオもわざと意味あり気にアッシェンバッハに微笑んだり・・・。
それがイヤなやつ~と映らないのは、彼の気品のせいかな。

でも、アッシェンバッハの愚かとも思える行動が今の私には笑えません。
私自身が彼の年齢に近づいてきたからなんでしょうねぇ。
タージオの圧倒的な美しさの前に、何とか自分も若さを取り戻したいと思ったのか、アッシェンバッハは床屋に薦められて髪を染め、肌を白く塗ります。
彼はベニスに来るときに船上で白塗りの老人を見て嫌悪感を抱きます。
それなのに、自分も同じようなお化粧をしてしまってます。
皮肉ですよね。

アッシェンバッハは家族も音楽という芸術も失ってベニスに来ますが、そこで出会ったタージオは自分が失ったものを全て持っていると感じたのでしょうか。
タージオの美しさは彼が求めている芸術そのものだったんだなと思いました。
単にタージオの美しさ(=若さ)に惹かれただけではなく・・・。

最期は海に入るタージオを浜辺で見つめながら息絶えるアッシェンバッハ。
染めた髪からは黒い汁が垂れ、白塗りのお化粧も崩れてあまりにもみじめです。
アッシェンバッハの目に映るのは海の中で逆光のシルエットが美しいタージオ。
残酷な対比だと思うのですが、アッシェンバッハが捜し求めていた芸術を見つめながら息絶えるのなら、むしろ幸せだったのかなとも思います。
タージオはその時、何かを指差してるんですね。
それは、アッシェンバッハが行き着く所、行くべき所に導いてるのかなと思いました。
なんか、そうでも思わないとアッシェンバッハがあまりに気の毒というか・・・。
(だって、ホントはアッシェンバッハの思う芸術の対極にいるのがタージオだと思うんです。
劇中でアッシェンバッハが彼の友人と戦わせる芸術論でそのように感じました。)

それにしても、いくら若作りのためだとしても、白塗りをさせる床屋のセンス・・・。
酷いなーと思って自分を顧みると・・・
明らかに若い頃よりお化粧が厚くなってるなーと気づきました。^^;
周りの同年代の友達もそうです・・・。
やっぱりアッシェンバッハの気持ちが今なら分かるなあ・・・。

ベニスの風景、マーラーの音楽、タージオ、何もかもが美しい映画です。
でも、死の匂いがする映画でもあります。
年をとっても充実した人生を送っている方ならまた違うかもしれませんが、私のように寂しい中年生活を送ってるものには切な過ぎる映画です。

好き嫌いが分かれると思いますが、歳月を経て観なおすと、新たな心情に気づかせてくれる映画かもしれません。


コメント
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