遠藤雷太のうろうろブログ

何かを観たら、とにかく400字または1000字以内で感想を書きつづるブログ。

PARCO PRODUCE『ハムレットQ1』

2024-05-28 16:28:00 | 演劇を見てきた

2024/5/24

・映像では何度もPARCO劇場の作品を観ているが、現地での観劇は初めて。

・わりと暑い日に長々歩いた上に、ちょうどいい感じに休めるところがなく疲労困憊状態だった。みんな、あんな坂をのぼっていたのか。

・中段やや下手。見やすい席でほっとする。

・舞台装置がシンプルで美しい。

・下手奥に向かってせり上がっている。上手側には瓦礫に見えるオブジェ。玉座にも使う。

・ハムレットが父親の仇である叔父に復讐する話(何度も書いているとだんだん雑になる)。

・ハムレット役は吉田羊さん。男性として演じる。

・演者が女性であることの違和感はなかった。

・一昔前だったら「女性が演じる意味とは」が重要になりそうだけど、トピックの一項目程度だったと思う。

・商業レベルでも、こういう性別違いが当たり前になる傾向は進みそう。いい流れ。

・男女逆転の『じゃじゃ馬ならし』とか、もうやっていそうだなと検索したら2019年にやってた。最近。

・ハムレットは、華奢な体つきで耽美。音声の高低を使い分けられるのは女性の演者特有か。狂人と狂人でない時がくっきりしている。

・前々から疑問だった、ポローニアスはなんで刺されたのか問題。「いきなり刺すことなくない?」と思っていた。

・今回はおそらくセリフが足されていて、現国王のクローディアスだと思っていたという説明。

・一瞬なるほどと思ったけど、その直前に殺せるチャンスを見逃しているので納得しにくい。

・あと、ポローニアスが物陰に隠れてからの一連の流れを演劇的にきれいに見せるのは大変そうだといつも思っていた。

・最初、それ用に大きな仕切りが運び込まれたのかと思ったら、劇中劇用の幕だった。そのあとに隠れる用の幕が下りてきた。この順番なら不自然じゃない。なるほど。

・Q1は展開が早い。ラジオCMのものものしい調子とはかなりギャップがある。端的に見やすい。

・序盤、ちょっと雰囲気が重たく感じたものの、誰がどうしてそういう風になったのかがわかりやすい。

・一期一会の演劇という形式なんだから、十分有力な選択肢ではないか。

・というか、Q1を謳わなくても、ハムレットの上演台本を作るときに参考にした人は多いんじゃないかと思う。

(2024/5/24 18:30開演 PARCO劇場)

コメント
  • X
  • Facebookでシェアする
  • はてなブックマークに追加する
  • LINEでシェアする

新国立劇場『デカローグ5・6』

2024-05-24 23:30:23 | 演劇を見てきた

2024/5/24

・ポーランドの映画監督キシェフロフスキーが旧約聖書の十戒をテーマに作成した10本の中編映像作品のうち、第5話と第6話を演劇に翻案した作品。

・事前にドラマ版のDVD-BOXで全話視聴して予習十分。

・知識ゼロの状態からだいぶん愛着は沸いているものの、第5話と第6話は、端的に言って話が嫌い。

・舞台化したら印象が変わるかもしれないし、行きがかり上、見ない選択肢はない。

・そんな心持ちもあり安価なテラス席を購入。下手側。

・舞台に対して椅子が垂直方向に並んでいるのでずっと左横を向いて観劇することになる。

・加えて左隣の人(舞台に対しては前方の人)が前傾姿勢。舞台の左側半分が見えない。アナウンスしていたのに。これは声掛け案件かと思っていたら開演10分位で姿勢を変えてくれた。

・第5話は、無軌道な若者がタクシー運転手を殺して死刑になる話。

・弁護士が死刑を反対する立場で苦悩している。

・ドラマ版の被告はいかにも無軌道な若者という感じで鬱屈した気持ちに対しては正直だったのに対し、舞台版ではわりと同情しやすい人柄に調整されていたように見えた。

・テーマをはっきりさせる意図だとは思うんだけど、この雰囲気で簡単に殺人を犯せるのはかえって怖い。

・自分も死刑には反対の立場だけど、死刑の考え方についてとりたてて新しいところは見出せなかった。

・第6話は、覗き趣味の若い男性が覗き相手の女性と仲良くなる話。

・覗き、いたずら電話、郵便物の偽造、付きまとい、当てつけの自傷行為、個人情報の私的利用かつ悪用と、自分の感覚では全く同情の要素はないんだけど、本作では全部許されている。

・男性から見た、理想的な女性という感じ。都合が良すぎる。

・舞台版では、女性の自暴自棄になっている部分が強調されて、覗き男の存在が、彼女にとっても救いになるという要素が強め。

・舞台版でおどけた感じの演技が足されていたけど、どういう意図だったんだろう。

・若干見やすくはなっているものの、「経験がないからと言って何でも許されると思うなよ」という感想は変わらなかった。

(2024/5/23 19:00開演 新国立劇場小劇場)

コメント
  • X
  • Facebookでシェアする
  • はてなブックマークに追加する
  • LINEでシェアする

DDT「DRAMATIC DREAM TOUR 2024 in SAPPORO【DAY2】」

2024-05-06 23:08:04 | 演劇を見てきた

2024/5/6

・オープニング。どこかで聞いたことのあるようなマイクアピール合戦。そういうご当地感の出し方もあるのか。

・もともと好きな人は楽しいし、今なら配信でいろいろ見られるから意外と間口は広いはずだし、全く知らない人でももはや古典化している掛け合いそのものの力強さで盛り上がれる。客を選ぶようで意外と強い。

・男色ディーノという存在。世の中のセクハラに対する考え方とか、ヒールとか、人気ヒールのベビー化とか、下ネタの塩梅とか、ベテランレスラーとしての立ち位置とか、見れば見るほど思考を求められる。深い。

・大社長の長期休業は寂しい。それすらネタにするのはさすがだった。

・最後は謎に平田一喜と松井レフリーが入れ替わっておしりにはさまれていた。

・試合中、ヨシ・タツの「おまえ喋りすぎだ」という指摘。たしかにみんな喋るんだけど、喋りがおもしろい人とつまらない人がいるので一言あったのは嬉しい。

・全体的にベルトを持っている人が多い。数えてないけど、出場選手の三分の一くらいが何かのチャンピオンという印象。ありがたみを感じにくい。

・なので、今のKO-Dチャンプが上野勇希だったことにやっと気づいた。言われてみればたしかに。「効いたよ」のイントネーションがさわやかに感じる。

・Tシャツを買うなら佐々木大輔がいいな。

・第四試合の須見和馬。第一印象、苦手なタイプのヤンチャさだったけど、格上に対しても抜けのいい生意気さと、とにかくやられまくっているのを見ているうちに印象が変わる。

・クリス・ブルックスが保護者みたいになっている。

・秋山準のチョップはとてもいい音がする。

・おっさん三人と須見+保護者の組み合わせが、須見選手の魅力を最大限に引き出していた。今大会のベストバウトかも。

・派手な技ができる強い選手より、やられっぷりのいい選手のほうが印象に残る。

・序盤の場外ダイブは作為が強すぎる。

・HASASHIMAのカウンターの水面蹴りかっこいい。

・IamHappyルールはこなれてきたら面白くなりそう。またやる機会あるのかな。

・無邪気にレゴで遊ぼうとするお子さんに、レゴは凶器ではないという当たり前のことを教えられる。レゴは子供の夢なんだからほどほどにしてほしい。

・オーソドックスなDAY1に比べると、いろいろ実験してみた感じの日だった。

DDT「DRAMATIC DREAM TOUR 2024 in SAPPORO【DAY2】」(有料)

北海道・札幌サンプラザ 金枝の間 2024.4.29

コメント
  • X
  • Facebookでシェアする
  • はてなブックマークに追加する
  • LINEでシェアする

劇団words of hearts『この生は受け入れがたし』

2024-04-26 22:42:15 | 演劇を見てきた

2024/4/26

・東京から東北の寄生虫研究室に異動してきた研究者とその妻が、環境の変化に対して正反対の反応をしてしまう話。

・会話はほとんどが津軽弁と福島弁、そして標準語。

・おそらく俳優さんのほとんどはネイティブではないので、方言指導を経て、上演に臨んでいる。

・聞いていて言葉の区別や練度がわかるわけじゃないけど、会話のリズムはよく、緊張感を損なわず聴き続けることができた。

・文字にすると意味の分からないようなフィラー的な声を自然に差し込んでいる。

・話にわかりやすい起伏が少ない平田オリザ戯曲では、会話の精度が一番大事。

・個人的に好きでたまに目にしている生き物情報がなぜかハマって心を見透かされた気分になる。

・レイコクロリディウムとかフタゴムシとか。カタツムリは見た目がかなりグロテスクになるので、舞台上で鮮明な映像を出したらダメだったと思う。楽しいけど。

・寄生虫と宿主から、寄生する寄生されるの関係性を、夫と妻、東京と地方、専門家と一般人、親と子供など、異なる複数の組合せに重ねている。

・専業主婦というキーワードひとつ取っても、どっちが寄生しているのかは見方次第。

・あわせて寄生虫という言葉が、一般的に言われるようなネガティブな意味を持つのかどうかも問われる。

・どんなにネガティブなことでも、研究者が新しい発見に喜んでしまうのは仕方ないことだと思う。

・対象を好きかどうかと研究の成果はたぶん直結する。

・例えば、人の体を切るのが好きな医者と嫌いな医者でどちらが外科医として信用できるかは微妙なところ。

・お話は常に平熱で進行する。

・奥さんがぴりっとしたことを言っても、現実がそうであるように、その場は受け流して何なら場を和ませようとしたりする人たち。

・舞台上に起きていることは静かなのに、水面下では色んな関係や感情がドロドロと溶けているような感じ。現実の反映としてとても正しい作品だった。

・奥さんは嫌いな寄生虫の講義を受けているし、夫も歩み寄りを見せたし、たぶんあのあとしっかり話すんだろうなと少しだけポジティブな気持ちで終われた。

(ターミナルプラザことにパトス 4/26 15時の回)

コメント
  • X
  • Facebookでシェアする
  • はてなブックマークに追加する
  • LINEでシェアする

クシシュトフ・キェシロフスキ監督『デカローグ』第7話 ある告白に関する物語

2024-04-23 00:24:28 | 演劇を見てきた

 

2024/4/22

ある女性が、若くして出産した結果、母親に娘を奪われてしまう話。

解説によると、第八戒「あなたは盗んではならない」がモチーフらしい。

それで母親に娘を奪われた女性のエピソードを扱う飛躍具合が好き。

一番小さい子供を祖母と母で奪い合う感覚は結構いろんな家庭で見られると思うけど、立場の強い弱いがはっきりしすぎている。

実の母親のほうがどんどん追い込まれて誘拐まがいのことをしてしまう。

三代それぞれの立場で盗む盗まれるの見え方が全然違うのがおもしろい。

小さな子供からしたら、自分がずっと母親だと思っていた人が祖母だったから逃げようと言われてもついていけない。

落ち着いたら「ケンカするな、仲良くしろ、私はおまえらの所有物ではないぞ」と言ってあげてほしい。

最後の後味の悪さも嫌いではなく、ここまでのエピソードの中では一番好みだった。

コメント
  • X
  • Facebookでシェアする
  • はてなブックマークに追加する
  • LINEでシェアする

黒澤明監督『椿三十郎』(1962年)

2024-03-19 23:29:44 | 演劇を見てきた

2024/3/19

・椿三十郎を名乗る浪人が、冤罪で拘束された城代家老を救おうとする若者たちを助ける話。

・その若者たちが九人もいる。似たような若い武士たちが彼のあとをウロウロついていく。

・椿三十郎は若者たちを一人も殺さないようにゴールに導く。ゲームの『レミングス』っぽい。

・金魚のフン状態の若者たちの中でも決して埋もれない田中邦衛の顔面力。

・96分。時間が短い。内容も軽い。巨匠の作品という感じがしない。

・各登場人物の役職や身分がよくわからないまま見ていたけど、その時その時で登場人物たちが何をしたいのかわかりやすく全然ストレスにならない。

・囚われのお姫様ならぬ城代家老のおじいちゃん。命の危機だったのに、己の馬面をネタにしてのほほんと若者たちを笑わせている。胆力があるとも言えるけど、ゆるい。

・家族の危機なのに奥方も娘もなんだかのんびりしている。小川に椿の花弁が流れたら突入の合図。

・そして、押し入れの中のあいつが一番軽い。

・こんなに緊張感が無くていいのか不安になる。

・とにかく椿三十郎の言うことを聞いていれば安心。

・見ている間は、椿がどうして若者たちを助けるのかよくわからなかった。最初に十人目を自称するところも、それまでの彼の言動とは合わないように感じる。

・あとで確認したら、『用心棒』の続編的作品とのことなので、彼の人間性や行動原理についてはそちらのほうで言及されているのかも。次はこれ見よう。

・椿三十郎の小細工と力技の振り幅がものすごい。

・三十人叩き斬ったあとに、逆に襲われたことにするから縄で拘束しろと言う。

・普通はそれじゃ成立しないはずなんだけど、三船敏郎の殺陣の迫力と存在感で楽しく見ることができる。

・椿三十郎のライバル役を仲代達矢が演じている。全体的にゆるいせいで強いのに損な役回りになっている。

・このころはまだ若手と言っていいと思うけど、のちの主演作品『切腹』を見ると、この時の三船敏郎並みの迫力を身に着けていた。しっかり受け継がれている。

・血の吹き出し方が思い切っている。公開時も見た人からツッコまれていたらしい。

・椿が重要なモチーフになっているのに、誰も首をはねられていなかった。それは安易ということか。

(U-NEXT)

コメント
  • X
  • Facebookでシェアする
  • はてなブックマークに追加する
  • LINEでシェアする

山田洋二監督『男はつらいよ 寅次郎夕焼け小焼け』(1975年)

2024-03-17 22:21:35 | 演劇を見てきた

2024/3/16

・寅次郎が飲み屋で謎の爺さんを拾ってきたことをきっかけに、なぜか市役所の接待を受けたり、金をだまし取られた芸者の話を聞いて、我が事のように怒ったりする話。

・最初の夢シーンは『ジョーズ』のパロディ。ジョーズが1975年、本作が1976年。早い。想像していたより死に方が雑すぎて笑った。源公むごい。

・こういうバカバカしいシーンの場合、味付け濃いめの渥美清の演技と、自然な感じの倍賞千恵子の演技を並べると、さくらのほうに違和感と面白味を感じてしまう。

・寅次郎が目まぐるしい。

・甥っ子のお祝いをしてくれる。人からバカにされたと拗ねる。居酒屋で無一文の爺さんを見かけたから立て替えてやる。家に泊めてやる。高名な先生だとわかると金づるにしか見えなくなる。接待を受けたあとにとらやの飯に文句を言ってイヤな顔をされる。

・満男の入学式の出来事。義憤で始まったのに、最終的に周りにあたり散らかしてしまう寅次郎。

・このシーンに出ている役者さん全員おもしろい。

・社長なのに寅次郎にちゃんと謝れるタコ社長はえらい。

・真顔で「お芋の煮っころがし」と囁くおばちゃん。

・寅次郎に対するさくらの表情。不安8憐れみ2くらいの感情が地層のように積み重なった結果、それ以外の表情ができなくなっている感じ。

・泥棒扱いされても、さくらには甘い寅さん。

・説得されてしんみりしているとらやの人たち。

・わりと急場なのに「姉ちゃん、国はどこだい?」で始まる説得。

・高名な画家の役に宇野重吉さん。言葉数が少なくても、たしかにその道の専門家に見える。

・おいちゃんが転んだのは何だったんだろう。台本なのかアドリブなのかアクシデントなのか。「危ないよ」の一言が効いている。

・鑑定のくだりがやたらと生々しい。

・彼の正体が判明したところで一回話が終わっているように見えるけど、全体の尺の半分手前くらい。

・そのあとの展開は全体的にふわっとしていたけど、予想できるところから、もうひとひねり入れていて、ものすごくきれいにまとめていた。

(U-NEXT)

コメント
  • X
  • Facebookでシェアする
  • はてなブックマークに追加する
  • LINEでシェアする

ペリン・エスマー 監督『リア女王 ~村を巡る陽気なおばちゃん劇団~」(2019年)

2024-03-07 10:12:15 | 演劇を見てきた

2024/3/6

・トルコの辺境の村をめぐって「リア王」の上演を続けるおばちゃんたちを撮影したドキュメンタリー。

・リア王なのに結構ゆるい雰囲気。そんなところでセリフの練習をやってるんだというところから始まる。

・見た目も言動もおばちゃんとしか言いようがなく、舞台にあがると豹変するという感じでもない。

・反面、演劇を上演するまでがとにかくハード。

・整備されていない片側崖の山道を延々と移動していたり、遊牧民の小さな集落を訪ねたり。

・現地に到着すると、出演者たちが街を歩いて住民とコミュニケーションをとる。

・宣伝には違いないんだけど、「よかったら遊びに来て楽しいよ」くらい感じで押しつけがましさがない。

・おばちゃんという属性に意味付けし過ぎるのはよくないけど、これがおじさんだったり、テレビタレントや芸術家っぽかったりすると全く違う雰囲気になるはず。

・お客さんはもちろん出演者すら現地調達している。

・演劇よりも道の舗装を優先するべきだというおじさん村人に、その場で王の娘役をオファーして、そのまんま不満を言わせようとしているところは笑った。

・行き当たりばったりとも言えるし、ものすごく高度な運営とも言える。

・いちおう演劇にかかわっているので、自分たちと全く違うところと全く同じところがあって面白い。

・歴史ある場所ならではの遺跡みたいな石のステージ、山の斜面一面が灰色の土か石の住居になっているような村。たぶん地中海だろうけど、美しい海辺。遊牧民。

・バックステージで「そろそろ衣装に着替えるか」と話しているのはよく聞くし、終演後、みんなで会場の椅子を片付けている時のものさびしさにも覚えがある。

・なんでリア王なんだろうと思っていたけど、親子の愛とそのわずらわしさは、かなり普遍性の高いテーマなんだと気付いた。

・演劇はこんな遠いところにもつながるのかと、素直に「演劇ってすげえ」と言いたくなる映像だった。

・見せていないところも多いんだろうけど、いつまでもこの感じで演劇を続けてほしいと思える、愛すべき人たちだった。

(アジアンドキュメンタリーズ )

コメント
  • X
  • Facebookでシェアする
  • はてなブックマークに追加する
  • LINEでシェアする

アガリスクエンターテイメント『令和5年の廃刀令』

2024-02-27 00:17:00 | 演劇を見てきた

2024/2/26

・帯刀が常識となった令和五年の日本社会で、廃刀令の是非を問うタウンミーティングの様子を描いた話。

・『12人の怒れる男』『12人の優しい日本人』と同じ系譜の話。実際、展開も似ている。

・登場人物が事件をほぼ他人事として扱う「~優しい日本人」に比べて、各々の信念や利害がしっかりしている。

・結果、支持派と否定派の入れ替えによる起伏は少なめで、どちらかというと人物描写に重きを置いている。

・裁判員裁判よりもっと非現実的なシチュエーションだからこそ、登場人物の実在感が大切。

・肯定派と否定派のバランスをとるのはとても難しいけど、かなり注意深く練りこまれていたと思う。

・最初の「刀は日本の心」おじさんの言っている理屈は、そのまんまアメリカの銃規制反対派に置き換えられる。

・帯刀という現実の日本人から見るとバカバカしく思える風習でも、アメリカなら銃規制反対の人は普通にいるので、最初にこの言い分を持ってきたのはうまい。

・早いうちに「元々刀はごく少数の武士のものなので日本人の心と言うのはおかしい」というツッコミが入ったのもスッキリする。

・是非はともかく、理屈はわかるという主張が多くてタウンミーティングとしての質が高い。

・「抑止力は機能していたのでは」というツッコミがあったけど、抑止力と反撃能力は違うので違和感あった。戦闘になった以上、抑止力は機能していない。

・スマ刀から票取りのための駆け引きが始まるのも見ごたえがあったけど、二択を迫られたら投票は厳しい。

・自分があの場にいたら棄権するかも。

・ある種の政治家らしさを完璧に具現化した榎並夕起さん。正面を切るだけで笑ってしまう。ズルい。あのキャラクターがいるから、他の人も動きやすくなる。

・淺越岳人さんもよかった。弁が立ち知識もあるのに倫理観がおぼつかなくなっている作家。

・髭とガタイの良い作家に既視感ある。西村賢太さんかな。

・現実問題、傘ですら邪魔なのに、あんなに長くて重い鉄の棒の携帯が一般化することはないとは思う。自転車に乗るときにめちゃめちゃ邪魔そう。

・それでも思考実験として面白かったし、本作品より現実の国会中継のほうが作り物っぽいのは、ほんとに何とかならんものかと思ってしまう。

 

《公演詳細(観劇三昧HP)》

■公演時期 2023/05/01

■地域 関東

■キャスト
淺越岳人
伊藤圭太
榎並夕起
鹿島ゆきこ
古谷蓮
前田友里子
矢吹ジャンプ(ファルスシアター)(以上アガリスクエンターテイメント)
江益凛
斉藤コータ
声の出演:北川竜二

■スタッフ
脚本・演出:冨坂友
文芸助手・オーサリング:淺越岳人
演出部:川嶋芙優(片岡自動車工業)
衣装・映像・スタッフロール:榎並夕起
小道具・題字:前田友里子
配信・撮影:ニュービデオシステム
スチール撮影:石澤知絵子・井上亮二
宣伝美術・デザイン:津和野諒
制作:佐伯凛果
制作助手:樫村健人
プロデューサー:佐野木雄太
製作協力:Cuebicle
協力:オフィスキール・片岡自動車工業・CRAPER・コメディユニット磯川家・チーズfilm・俳協・ファルスシアター・大和田あずさ・竹田ユウヤ
企画・製作:アガリスクエンターテイメント

■あらすじ

―どうやら、日本初の廃刀令が出るかもしれないらしい。

二〇二三年、相次ぐ刀剣による殺傷事件を受けて、世間では一般市民の帯刀を規制する気運が高まる。
歴史上初めて出される「廃刀令」をめぐり、国内の世論は真っ二つに。
全国に先んじて条例を検討し始めた**区はタウンミーティングを実施。

そして、八人の男女が集められた。

これは、明治期に廃刀令が出されなかった世界の会議コメディ。

コメント
  • X
  • Facebookでシェアする
  • はてなブックマークに追加する
  • LINEでシェアする

OrgofA『Same Time,Next Year-来年の今日もまた-』

2024-02-09 12:43:49 | 演劇を見てきた

2024/2/5

・お互い既婚者なのに一夜を共にしてしまった男女が、一年に一度二十五年間、同じホテルにて逢瀬を続ける話。

・OrgofA上演の本作は2019年以来2回目の観劇

・開場中、ホテルマン姿の明逸人さんがずっと客席に向かって語り掛けながら、客席の空気をほぐしている。

・長尺・翻訳物・ほぼ古典と人を緊張させる要素が多いので、そうやってお客さんにリラックスしてもらうのはコメディにとってとても大切だと思う。

・自分が観たのは年代ごとに3組の男女が演じるスペシャル回。六人の演者による二人芝居。

・どんな役者でも、一人の役を二十五年分も演じると、絶対に実年齢と合わない年代を演じることになる。

・それも役者の腕の見せどころだけど、各年代を実年齢に近い人が演じると、別種の納得感が生まれる。

・序盤は本庄一登くんと小野寺愛美さん。新しい出会い、初めての不倫。不安と混乱。そして、開き直り。

・一度手放してしまうと二度と手に入らないような感覚が詰め込まれていた。

・続いて飛世早哉香さん、遠藤洋平くん。今回の公演の本役でもあり、経験値の違いは舞台上にも現れている。

・存在として、演技として、公演として、あらゆる意味でこだわりが強い。

・前公演の記憶はだいぶボンヤリしているけど、遠藤くんの演技がより身体的で予測できない感じになっていた。

・二人が積み上げた関係性の成せる業なんだと思う。

・締めは町田誠也さん、太田有香さん。

・人生の荒波に揉まれ執着が取れていった感じがする町田ジョージと、自分の可能性を信じて行動し続け、ようやく一息ついた感じの太田ドリス。

・何かしているわけではなくても、いろいろなことがあったんだろうなと思わせる演技は、月並みだけど若い人には出せない味だと思う。

・似た雰囲気の役者さんを集めたようには見えないし、実際、三人の演者さんが同一人物に見えるわけではないけど、そのギャップは意外なほど脳内で補完できる。

・駅伝のチームのような意味で一体感がある。

・不思議で新鮮な感覚だったので、「それなら二人だけで演じたらどう見えるんだろう」と思うのも当然だし、実際SNS上でそういう感想が多かったのも納得だった。

(2024/2/5 19時の回 ターミナルプラザことにPATOS)

コメント
  • X
  • Facebookでシェアする
  • はてなブックマークに追加する
  • LINEでシェアする