2018/12/28
・およそ100年前の大正時代、四国丸亀の女学校で、サッカーにのめりこむ女生徒たちの友情と苦しみを描いた話。
・2018年総文祭演劇部門の最優秀賞作品。
・当時は女が大股を広げてボールを蹴ることがはしたない、なんなら女に学問は不要とされていたような時代。
・丸亀高等女学校の実在する資料を元に、女子サッカー史における長すぎる断絶を描いている。
・進歩的な校長が去り、彼女たちにサッカーを教えた女性教諭は口をつぐむ。
・生徒たちは大好きなサッカーを奪われてしまう。
・そんな話でも実際見てみると語り口が軽い。
・抽象表現も効果的だし、女生徒たちの掛け合いも楽しい。だからこそ、断絶の理不尽さが際立つ。
・冒頭の、サッカーの説明をしてると見せかけて、一人の女性が未知のスポーツに心を躍らせる描写。初期衝動は大事。
・あんなに目をキラキラさせてるんだから、サッカーぐらいいくらでもやらせてやれよと心から思う。
・ウダ先生は、男性の価値観を持った名誉男性と言ってよさそう。
・100年前の価値観だからしょうがないと思えればラクなんだけど、この問題は明らかに道半ば。
・上演時にはMeToo運動が盛り上がっていたし、今でも大学入試の不正という、高校生に直結しすぎる問題も現在進行形で顕在化している。
・東京オリンピック目前という時事性も作品にとっては追い風。なんという現実社会とのシンクロぶり。
・断絶を描く話である以上、本作に登場する女性たちは敗北するしかない。問いかける形でしか話を終えられなかったのは、100年後に生きる自分たちへの抗議でもある。
・作中の女性たちは、最終的に「世間的な意味での女」を演じるしかない。全体的に明るくて爽やかな話なのに、心の中で血の涙を流すような彼女たちの無念さも伝わってくる。
・そして「私たちはナデシコじゃない。人間だ」というありもしない台詞が聞こえてくる。
・作品単体の面白さは当然として、地域性も時事性もあるし高校生が演じることにも意味がある、ロイヤルストレートフラッシュのような作品。最優秀も納得。
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