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エンペラー・オブ・ジ・エア  イーサン・ケイニン  文藝春秋刊   柴田元幸訳 

2005年05月02日 | ’05年読書日記
イーサン・ケイニンの短編集で、出版デビュー作、だそうです。
中に入ってる短編のタイトルを挙げてみますと…。

 *夜空の皇帝
 *頭の中で何かがかちんと鳴る
 *音階の記憶
 *アメリカン・ビューティー (同名のハリウッド映画とは無関係、全然別の話です)
 *お互いを知り合う1年
 *私たちの家
 *夜の旅人
 *カーニバルの犬 またはダイヤモンドを買う男
 *スター・フード

この中では、「夜空の皇帝」「アメリカンビューティー」がよかったです。
あとがきにもありますが、この人の小説は、父親(もしくはその代わりとなっている兄)と、息子の関係を描いたものが多いような気がします。

あとがきに、すごくいい事が書いてあったのでご紹介…。

「自分の中で何かが決定的に変化する瞬間が訪れるのを、息を潜めるようにしてじっと待つ16歳の夏…それがイーサンの小説の原型だ。

無論全部の作品の主人公が文字通り16歳なのではない。18歳の事もあるし、もう成人に達している事もあるし、老人を主人公としたものさえある。

…少なくとも彼らは、自分の人生がまだ大きく変わりうるのだという思いをいまだ持っている。…少年たちと同じように、老人たちもまた発見の驚きに打たれる。
イーサンの小説では、人はみな16歳の夏を生きている(おぉ~!!名言です!!)」



私がイーサン・ケイニンの小説が好きなのは、読んでいるうちに、「あー、この人人間が好きなんだろうなぁ~」としみじみ思えるからです。
本を読んでいると、書き手(作者)が、どの登場人物に対して感情移入しているか、という事がだいたい分かるような気がするのですが、この人の本を読んでいると、イーサンは

+自宅の大きな木に大量の虫がつき、お隣の口うるさいオジサン(「木を切ってしまえ」と、再三けしかけてくる)から、自分の思い入れ深い木を守ろうとする主人公

+隣の家の大きな木に虫がつき、自分の庭の木にもそれ(虫)が伝染するのでは、と心配して隣にかけあう男

…この両方の人物とも大事にしているような気がするんですよね...何だかどう表現したらいいのかわからないのですが。

誰かを斬って棄てるようにえがくのではなく、どの人物に対しても共感を持って(人物に近づくように)表現しているところがいいなぁ、…と思うんですよね…。
何だか分かりづらい言い方ですみません。

ちなみに、(またあとがきですが)イーサン自身はこう言ってるそうです。

”僕は医者であるおかげで、人間がいかに弱い生き物かという事を学んだと思う”


「夜空の皇帝」は1985年、、「スター・フード」は1986年に’ベスト・アメリカン・ショート・ストーリーズ’(栄誉ある賞らしいです、よく分かりませんが)に選ばれ、
「エンペラー・オブ・ジ・エア」(この本自体)は、ホートン・ミフリン文学奨励賞を受賞しているそうです。



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