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「勝っちゃったらどうしよう」
「まさかなあ~ハハハ」
2つのペナルティゴールを決めたあとぼくたちの回りの反応はそういうものだった。
多くのファンは早稲田が勝つところを見に来たわけではなかった。佐々木組の最終試合、今年で任期が切れる清宮監督の最終試合、それを見届けようと集まっていた。
相手は社会人トップリーグのトヨタ。
勝つ、なんて思ってもいなかった。
「まさかな」が「おいおい」に変わったものの、後半いきなりトライを奪われ、「やっぱりな」に。しかしそれがトライではなく、逆にトヨタのオブストラクションとわかると場内は「もしかしたら」の雰囲気に。
そこからは観客七転八倒。
胃に悪い、胃に悪いよお、とぼやきながら見ているヤツ。
声をふりしぼって応援するヤツ。
やめて、やめて、やめてー、と絶叫している女性。
泣いてるオヤジ(ぼくじゃないよ)。
阿鼻叫喚の渦。
早稲田が東芝府中に勝ったとき、日本代表がスコットランド15に勝ったとき、雪の早明戦、それぞれぼくは競技場で見ていた。久しぶりにあの興奮が甦った。
いつもなら今のプレイはね、トライよりも、その前のセンターのボールを離すタイミング、あれがすごいんだよ、などと連れに説明していたのだけれど、この日はだめ。
写真もなし。
目の前で曽我部がインゴールにダイブしたとき、写真を撮る腕は天高く突き上げられていた。
トヨタのインプレイがなかなか切れずジリジリしながらも、ようやくノーサイド。
わき上がる歓声。
その一部、後ろの席で…。
「勝っちゃったよお。どうする来週?」
「来るしかないだろう? それにしても新幹線代がぁ………」
もう一試合佐々木組の試合が見られる喜びには代え難いね。