「この、卑怯者っ…!」
洋次は、司の様子を見て思わずそう叫んでしまった。
「うるさいっ、お前こそ、裏切り者じゃないかっ…!」
司は逆上し、洋次に向けてナイフを投げつけた。そのナイフは、洋次の左側の頬をかすめて、洋次の頬からツーッと血が流れた。
「…何してんのよっ…!」
それを見た好美は、完全にブチ切れ、司の顔に思い切りカウンターパンチを食らわせた。司は、その一撃で気を失い、その場に倒れた。
その様子を、周りにいた連中が一部始終見ていた。一人ずつ好美のもとへ歩いてくると、何を思ったのか、副番長の少年が、好美の前でひざまずいた。
「…今日から、アンタが番長だっ…」
「えっ…?」
好美が唖然としていると、他の連中も副番長に同意し、歓声を上げた。
「ちょっ、ちょっと、待ってよっ! そんな事勝手にっ…」
好美が慌てふためいていると、洋次がいつの間にか駆け寄ってきていて、勢いよく好美を肩車した。洋次の思わぬ行動に、忍達も驚いてしまった。
「コラッ、バカッ! 洋次、降ろせ~っ!」
事態は収拾つかなくなってしまい、結局、全員一致で、好美は新しい番長にされてしまった…。
翌日、文人は竜次を、父親の勤める大学病院へ連れて行った。検査を受けた結果、竜次の肋骨と脚の骨に、広範囲でヒビが入っていた為、数ヶ月ぐらい入院する事になった。その間、文人は毎日病院に顔を出し、授業のノートを見せていた。
好美はというと、放課後、副番長を屋上に呼び出し、番長になるのを断ろうとしたが、
「頼みますよ~っ! 植村のアネゴが仕切ってくれないと、また司にメチャクチャにされてしまうっ…!」
そう泣き付かれてしまい、正体を明かさない等といった条件付きで、好美は渋々、番長を引き受ける事になってしまった。
洋次は、好美が番長になったので、不良グループに留まる事にした。そして、今のままでは、好美の強さにはとうていかなわないと思い、今まで以上に自主トレに励むようになった…。
○
司がタイマンで『Dark・Tiger』に負けて、番長を退いた事は、札幌市内や近郊の不良達の間にまで知れ渡った。また、好美が『Dark・Tiger』として番長になった事によって、不良グループの仲間も、皆、司から離れてしまっていた。他校の不良や、敵対していた連中は、司が街中を歩いているのを見つけると、司に罵声をあびせたり、暴言を吐いたりしていた。
「この腰抜け~っ」
一人は、司の顔にツバをかけ、そう言い捨てた。
<くそっ…! これというのも、全てあの女のせいでっ…!>
司は、好美に復讐心を燃やしながら、街中を当てもなくうろついていた。その時、後ろから歩いてきた数人の少年達が、司を取り囲み、いきなり蹴飛ばした。驚いて顔を上げると、それは、司に『不意打ち』に遭った上級生だった。
「せっ、先輩じゃないっすか…」
司がうろたえながら言うと、その少年は、ニヤッと笑った。
「後輩から話聞いたんだけどよ、不意打ちしたの、お前だったんだって…? 随分とナメたマネ、してくれたじゃないかっ…!」
少年はそう言うと、仲間と一緒に、司にヤキ入れした。その最中、司の方へ歩いてくる、一人の中年男がいた。
<やっと、見つけたぞっ…!>
男は、上着のポケットに手を入れたまま、司の方へ近づいてきた。
洋次は、司の様子を見て思わずそう叫んでしまった。
「うるさいっ、お前こそ、裏切り者じゃないかっ…!」
司は逆上し、洋次に向けてナイフを投げつけた。そのナイフは、洋次の左側の頬をかすめて、洋次の頬からツーッと血が流れた。
「…何してんのよっ…!」
それを見た好美は、完全にブチ切れ、司の顔に思い切りカウンターパンチを食らわせた。司は、その一撃で気を失い、その場に倒れた。
その様子を、周りにいた連中が一部始終見ていた。一人ずつ好美のもとへ歩いてくると、何を思ったのか、副番長の少年が、好美の前でひざまずいた。
「…今日から、アンタが番長だっ…」
「えっ…?」
好美が唖然としていると、他の連中も副番長に同意し、歓声を上げた。
「ちょっ、ちょっと、待ってよっ! そんな事勝手にっ…」
好美が慌てふためいていると、洋次がいつの間にか駆け寄ってきていて、勢いよく好美を肩車した。洋次の思わぬ行動に、忍達も驚いてしまった。
「コラッ、バカッ! 洋次、降ろせ~っ!」
事態は収拾つかなくなってしまい、結局、全員一致で、好美は新しい番長にされてしまった…。
翌日、文人は竜次を、父親の勤める大学病院へ連れて行った。検査を受けた結果、竜次の肋骨と脚の骨に、広範囲でヒビが入っていた為、数ヶ月ぐらい入院する事になった。その間、文人は毎日病院に顔を出し、授業のノートを見せていた。
好美はというと、放課後、副番長を屋上に呼び出し、番長になるのを断ろうとしたが、
「頼みますよ~っ! 植村のアネゴが仕切ってくれないと、また司にメチャクチャにされてしまうっ…!」
そう泣き付かれてしまい、正体を明かさない等といった条件付きで、好美は渋々、番長を引き受ける事になってしまった。
洋次は、好美が番長になったので、不良グループに留まる事にした。そして、今のままでは、好美の強さにはとうていかなわないと思い、今まで以上に自主トレに励むようになった…。
○
司がタイマンで『Dark・Tiger』に負けて、番長を退いた事は、札幌市内や近郊の不良達の間にまで知れ渡った。また、好美が『Dark・Tiger』として番長になった事によって、不良グループの仲間も、皆、司から離れてしまっていた。他校の不良や、敵対していた連中は、司が街中を歩いているのを見つけると、司に罵声をあびせたり、暴言を吐いたりしていた。
「この腰抜け~っ」
一人は、司の顔にツバをかけ、そう言い捨てた。
<くそっ…! これというのも、全てあの女のせいでっ…!>
司は、好美に復讐心を燃やしながら、街中を当てもなくうろついていた。その時、後ろから歩いてきた数人の少年達が、司を取り囲み、いきなり蹴飛ばした。驚いて顔を上げると、それは、司に『不意打ち』に遭った上級生だった。
「せっ、先輩じゃないっすか…」
司がうろたえながら言うと、その少年は、ニヤッと笑った。
「後輩から話聞いたんだけどよ、不意打ちしたの、お前だったんだって…? 随分とナメたマネ、してくれたじゃないかっ…!」
少年はそう言うと、仲間と一緒に、司にヤキ入れした。その最中、司の方へ歩いてくる、一人の中年男がいた。
<やっと、見つけたぞっ…!>
男は、上着のポケットに手を入れたまま、司の方へ近づいてきた。