初々しい空色の花がなつかしい「ワスレナグサ」。つぼみのピンクも可憐だ。名前がいいので、俳句の世界でも人気だ。「消ぬばかり勿忘草の風に揺れ 菊川芳秋」。もっとも「花よりも勿忘草といふ名摘む 粟津松彩子」というところもあるが。
(2022年初夏 川崎市)
初夏の花シリーズ(2022年初夏)
「キンシバイ」(初夏の花 2022-01)
「どくだみ」(初夏の花 2022-02)
「アマリリス・アップルブロッサム」(初夏の花 2022-03)
「カラー・ピカソ」(初夏の花 2022-04)
「ペンステモン・ハスカーレッド」(初夏の花 2022-05)
「オルレア」(初夏の花 2022-06)
「 サルビア・ミクロフィラ・ホットリップス」(初夏の花 2022-07)
「アスチルベ」(初夏の花 2022-08)
「ゴデチア」(初夏の花 2022-09)
「ルリマツリ」(初夏の花 2022-10)
「アネモネ・ヴィルジニア」(初夏の花 2022-11)
「ハタザオキキョウ」(初夏の花 2022-12)
「サフィニア」(初夏の花 2022-13)
「エケベリア "七福神"」(初夏の花 2022-14)
「ホタルブクロ」(初夏の花 2022-15)
「ハクチョウソウ」(初夏の花 2022-16)
「マルバシモツケ」(初夏の花 2022-17)
「ブルビネ・フルテスケンス」(初夏の花 2022-18)
「オオヒエンソウ」(初夏の花 2022-19)
「キリンソウ」(初夏の花 2022-20)
「西洋オダマキ”イエロークイーン"」(初夏の花 2022-21)
「シラン」(初夏の花 2022-22)
ワスレナグサは、原産地では多年草ですが、暑さに弱く、寒冷地を除き、花後に枯れるので、日本では一年草として扱われています。もともとワスレナグサという和名は、スコルピオイデス(Myosotis scorpioides)にあてられていますが、園芸的に親しまれている種類は、主にエゾムラサキ(M. sylvatica)、一部にエゾムラサキとアルペストリス(M. alpestris)との種間交雑種があります。エゾムラサキは水辺に咲く植物で、日本でも本州中部以北の高原の湿地に野生化しています。したがって、園芸種も湿り気のある土壌を好み、水切れを起こすと傷みます。基本種の花色は青に黄色または白色の目が入ります。
秋または春に流通するポット苗を入手する際は、根の回りきっていないできるだけ若い苗を選ぶと、庭やコンテナに植えつけたあと、旺盛に生育します。葉が茶色くなったり、葉がピンとしていない株は、店頭などで水切れを起こした可能性があるので避けましょう。
基本データ
園芸分類 草花
形態 一年草(寒冷地では多年草) 原産地 世界の温帯
草丈/樹高 10~50cm 開花期 3月下旬~6月上旬
花色 白,ピンク,青,紫 栽培難易度(1~5)
耐寒性 普通 耐暑性 弱い
特性・用途 開花期が長い
勿忘草 例句を挙げる。
すぐ横を勿忘草の水流れ 佐々木六戈 百韻反故 冬の皺
ふるさとを忘れな草の咲く頃に 成嶋瓢雨
わたしひとり勿忘草のこちら側 浅利康衛
サマルカンド・ブルーはなみだ勿忘草 佐々木とみ子
シヤンソンを聴く薄明の勿忘草 きくちつねこ
バイカルの勿忘草に空高し 依田明倫
一面の勿忘草に日は淡し 轡田進
勿忘草いよいよ口を閉ぢて病む 石田波郷
勿忘草そこが日溜まり司祭館 渡辺乃梨子
勿忘草たちまち迷ふ出湯の径 児玉 小秋
勿忘草にいろいろ別れありにけり 赤松寿代
勿忘草の法體の漢なぞ 佐々木六戈 百韻反故 吾亦紅
勿忘草わかものゝ墓標ばかりなり 石田波郷
勿忘草人は恋にも死ににけり 林 翔
勿忘草光りて呼ぶはちさき水面(みお) 香西照雄
勿忘草利根の離村にやさしかり 大谷雅子
勿忘草司祭の館丘に寂ぶ 小池文子 巴里蕭条
勿忘草夫に贈りし日は遠く 堀内民子
勿忘草神々の座に氷河照り 有働亨 汐路
勿忘草穂高のゆらぐ泉あり 澤田 緑生
勿忘草蒔けり女子寮に吾子を入れ 堀口星眠 営巣期
勿忘草霧に咳き人行けり 堀口星眠
夕さりぬ勿忘草へ山の風 伊藤敬子
奏でる海へ音なく大河勿忘草 中村草田男
小さう咲いて勿忘草や妹が許 村上鬼城
少し長け勿忘草の色減りし 稲畑汀子
忘れな草冷ゆるラファエルの石棺に 小池文子 巴里蕭条
忘れな草更けてゐし寺の夜風にも 中川宋淵
情夫待つ勿忘草の風の中 高橋彩子
摘までゆく勿忘草よふるさとよ 大久保橙青
母の忌に勿忘草を姉さげて 南 耕風
水神へ勿忘草の日向道 伊原正江
消ぬばかり勿忘草の風に揺れ 菊川芳秋
美しき勿忘草を植ゑ替へし 枌 さつき
船室の勿忘草のなえにけり 佐藤眉峰
花よりも勿忘草といふ名摘む 粟津松彩子
血を喀けば勿忘草の瑠璃かすむ 古賀まり子 洗 禮
遠く細し勿忘草の径のこる 田島誠壽
雨やさし勿忘草に降りにけり 佐藤美恵子
雨晴れて忘れな草に仲直り 杉田久女
雫して勿忘草の色褪せず 佐藤きみこ