私には、母方の曾祖父母がいました。
曾祖父は10代の頃に結婚したのですが
曾祖母が亡くなって後妻さんを迎えいれたのでした。
後妻さんとは曾祖父は子供をつくらず、
前妻さんとの子供達と後妻さんを養っていました。(後妻さんをうちの親戚達は「ばばちゃん」と呼んでいました。)ばばちゃんも前妻さんとの子供達を本当の子供のように育ててくれたようです。
やがて、子供達も結婚して子供が生まれました。それが母と兄妹達です。
ばばちゃんは祖母を気に入ってたようで、
後に一緒に豆腐屋として祖母と豆腐を作り、
お店を切り盛りしていました。
曾祖父母と祖母は同居して、ばばちゃんは私の母と兄妹達を母親代わりに育ててくれたそうです。
祖母は男のように家族の為に働いていたようです。時々、曾祖父母も手伝っていたようでした。お豆腐の他に簡単なお惣菜や豚肉や卵を売っていました。最盛期には人も雇っていたそうです。従業員の、お昼ご飯は、ばばちゃんが作っていたそうです。思いっきり働いてもらうように、ご飯は大盛りだったそうです。
ばばちゃんは祖母の子供をとても可愛がってくれました。長女の母は、お気に入りだったようです。お弁当を作ったりお洒落する事を教えてくれたのも、ばばちゃんだったそうです。やがてその孫達も結婚します。
血は繋がっていないからこそ、
本当の孫のように可愛がってくれたみたいです。親戚達が集まると、ばばちゃんはみんなに「ばばちゃんが死んだら、線香の1本もあげてくれなぁ。忘れないでくれなぁ。」と言い、口癖でした。
忘れさられるんじゃないかと心配していたようです。男の孫達のお嫁さんには、1人1人、手をとって愛おしそうに「うちに嫁にきてくれて、ありがとうね。本当にありがとう。仲良くやってね。」と手をさするのでした。そして男の孫達に、仲良くやらなきゃダメだよと念を押すのでした。女の孫達にも、仲良くやるんだよ。と、切々と言い聞かせるのでした。ひ孫達の事も愛してくれてとても可愛がってくれました。私には「みっちゃんのお母さんは体が弱いから宜しく頼むなぁ。」と母を案じていました。
血が繋がっていないからこそ、絆を大切にしなければと、ばばちゃんは思っていたのかもしれません。そんな、ばばちゃんが亡くなった時は駆けつけた者達はみんな亡骸を見て
号泣していました。大人達がワーワーと泣いていました。私は長子の子供だったので、特に目にかけてくれました。私は初めて最愛の人を亡くした現実を受けとめられずにいました。その夜、私は夢をみました。部屋の扉をあけて、ばばちゃんが入ってきてひ孫達の布団をかけ直してくれたのです。寒い季節だったので風邪をひかないようにと心配しているようでした。いつものばばちゃんでした。朝に、叔父が枕元に婆さんが立ったよと話しているのが聞こえてきました。それを聞いて、あぁ、やっぱり、ばばちゃんが心配してみんなに会いにきてくれたんだと私は思っていました。葬儀を終えて火葬場へ行き棺に納められたばばちゃんに、火葬場の人が最後のお別れをして下さいと言った時、私はこれで本当に最後なんだ、もう、2度と会えないんだと思うとそれまで呆然としていただけの私が
号泣してしまいました。わんわんと泣いてしまいました。ばばちゃんの棺に花を入れながら、溢れる涙を止める事ができませんでした。兎に角、涙が流れてきて、どうすることもできませんでした。その後の事が記憶に無く、ぼんやりとしていたのでしょう。初めて「死」というものについて考えさせられたきっかけになったかもしれません。
その夜、うちの一家は帰る事になりました。
みんなに別れの挨拶をして車に乗り込み母の実家を後にしました。
それから車でずっと峠を走るのですが1台も対向車が来ないのです。私達家族は不思議だねと言いながら、ずっと対向車が来ないか気をつけて見ていましたが長い時間、すれ違わないので、ばばちゃんが心配しているのかもと母と話していました。事故で通行止めかな?とか、何かあったんだろうかと車の中で言ってたのですが峠を下りいつもの直線道路を走っても対向車とはすれ違わないので、
やっぱりばばちゃんが事故を心配してるんだよと話していました。それからしばらくして、とある交差点についた時、やっと対向車とすれ違いました。不思議な出来事でした。
心の中で、ばばちゃん、ありがとうとつぶやいていました。あれからもう何十年と経ちますが、ばばちゃんが笑いながら、「ばばちゃんが死んでも忘れないでくれなぁ、線香の1本もあげてくれなぁ」と言う台詞を思いだしお墓参りに行かなくちゃと思います。母と娘を連れてお墓参りに行った時はお線香を沢山あげて、忘れずに来たよと言いながら手を合わせました。
皆を心から愛してくれたばばちゃんが忘れら
れません。愛してくれた事に感謝しながら、
私なりに生きていかなければと思います。
みんな、仲良くするんだよとあの世から見守
ってくれていることでしょう。
愛してくれた人を悲しませたくないと思います。頑張るからねと心の中でつぶやくのでした。