沸石の中の虹 河津の海岸で

2021-06-06 | 虹の結晶

沸石は結晶が層状に重なって成長することがある。

特に束沸石はその傾向が強いため、層間での反射や屈折、回折などで虹が生まれる。

菱沸石は、結晶内部に小さな割れが生ずる。

その隙間でにじが生じる。

いずれも天然の虹である。

束沸石

菱沸石

 


青白い虹を秘める玻璃長石

2021-01-18 | 虹の結晶

玻璃長石 サニディン Sanidine (K,Na)AlSi3O8 単斜晶系 

北朝鮮咸鏡北道明川郡下雩面咸鏡洞在徳山

玻璃長石は、高温環境で結晶したナトリウムを含むカリ長石。写真はムーンストーンの呼称で古来有名な、北朝鮮明川産の標本。層状結晶の隙間で生じた光の散乱が要因であり、シラーと呼ばれている。我が国では長野県大町市の木崎湖近隣、富山県南砺市の人喰谷で採集が可能。もちろんシラーが生じない玻璃長石もある。ガラス質透明~半透明の20ミリほどの大きさの綺麗な形状の結晶であれば、和歌山県太地町で産出する。

長野県大町市木崎湖

富山県南砺市人喰谷


青白い虹を呈する微斜長石

2021-01-17 | 虹の結晶

微斜長石 マイクロクリンMicrocline KAlSi3O8 三斜晶系 山梨県甲府市黒平

長石は、質の異なる2種類が層状構造を成して成長することが多い。面白いのがその点で、層状構造の微細な隙間で反射、散乱、干渉、回折などが起こり、青白い微光の滲みを生じさせることがある。オパールのような色彩の顕著な虹ではないが、滲み出るようなシラーと呼ばれる彩りが美しい。微斜長石は正長石と成分が同じで、結晶系が正長石の単斜晶系と異なる。

 長石はXAlSi3O8の化学式を持つ鉱物で、XにAl、K、Caが入ることによって、カリ長石KAlSi3O8、曹長石NaAlSi3O8、灰長石CaAl2Si2O8となり、これらの割合が異なった個溶体を成している。曹長石から灰長石の間が斜長石群で、青白い虹色を呈するラブラドライトがある。カリ長石から曹長石の間がアルカリ長石と呼ばれ、結晶ができた温度により、性質が異なる。


蛍石の成長変異面での虹

2021-01-16 | 虹の結晶

蛍石 Fluorite CaF2 ハロゲン化鉱物 等軸晶系

Dongwuqi Mine, Inner Mongolia Autonomous Region, China

初期段階で八面体に成長していた蛍石が、環境の違いで途中から六面体に変化した結晶である。つまり、八面体の蛍石を六面体の蛍石が包んでいる結晶だ。その結晶の相間で反射と干渉が起きている。結晶内の割れとは異なる、自然のままの虹の発生である。

蛍石そのものは冴えない標本だが、点在するいくつかの蛍石に、そして一つの結晶の2~3面に虹が現れている。


神岡鉱山の虹水晶

2021-01-15 | 虹の結晶

 

水晶内部の結晶のr面・z面 Quartz SiO2 上岡鉱山 岐阜県

水晶の成長が途中でいったん停止し、再度成長が始まると、そこにごくわずかの隙間を生じることがある。また、微細な別の鉱物が降り積もった場合に、その隙間で干渉が起こることがある。虹が生ずる隙間は、ミクロン程度のオーダーである。多くはr面やz面など斜面に現れる。時に層状に複数の虹が生じていることもある。


水晶中の細い針状板チタン石

2021-01-14 | 虹の結晶

 

水晶 Quartz SiO2・板チタン石 Brookite TiO2 Corinto, Minas Gerais, Brazil

 素晴らしい干渉色を呈する水晶である。隣り合う水晶の間の、柱面に生じた酸化物の皮膜による虹である。水晶に取り込まれた細い毛状の板チタン石もまた魅力。毛状板チタン石と水晶の間に薄い層があり、しかも毛状結晶が密集しているため、その近接した部分でも反射したり屈折した光が干渉している。金属の酸化被膜は、ごくごく薄ければ知覚できないにもかかわらず、光の反射の方向によっては虹色を呈するほどに強く見えてくることがある。

下の写真は水晶の中に濃密に板チタン石の細い針状結晶が成長している。

水晶 Quartz SiO2・板チタン石 Brookite TiO2 Pakistan


虹入り方解石

2021-01-11 | 虹の結晶

方解石 Calcite CaCO3 炭酸塩鉱物 三方晶系

Las Choyas, Mun. de Aldama, Chihuahua, Mexico

ジオードの内部に結晶した方解石から見つけた虹彩である。一つのジオード内に生じている数個の方解石の結晶に虹彩がみられ。結晶成長の過程で層状構造となったのであろう、光の反射と干渉を起こしている。この産地のジオードには、空隙に小さな水晶や針状の赤鉄鉱、方解石などが結晶していることがある。


虹入り柘榴石

2021-01-11 | 虹の結晶

灰鉄柘榴石 Andradite  Ca3Fe32(SiO4)3 珪酸塩鉱物 等軸晶系 

奈良県吉野郡天川村

柘榴石の結晶は、含まれているカルシウムと鉄の量が微妙に変化しながら成長するため、累帯構造を成すことがある。累帯構造の薄い層がミクロンオーダーであると、入射した光が干渉を起こして虹色を呈することになる。研磨によって結晶端部に薄い層状の虹色が鮮明に表れることがある。


虹入り水晶

2021-01-11 | 虹の結晶

水晶 Quartz SiO2 Nepal

 水晶内部には様々な他の鉱物が閉じ込められることがあり、インクルージョン、あるいは包有鉱物と呼ばれている。水晶の場合、インクルージョン鉱物の表面から写真のような自然のひずみによる虹彩が観察されることが多い。自然のひずみは、高温で成長した結晶が冷える際に、結晶内部の包有物に端を発して生じ、母結晶内に広がることがあり、時にはミクロン単位の隙間が生じ、反射と干渉で虹を呈する。


虹の結晶 オパール

2021-01-11 | 虹の結晶

虹色を呈する鉱物

無色透明な水晶などの内部に現れる虹は素敵だ。ここで言う虹とは、結晶内部に生じている隙間で起こる光の屈折や反射、回折、干渉などが要因の色の滲み。もっとも有名なのがオパールの遊色だろう。オパールは、小さな二酸化ケイ素の粒が規則正しく沈殿したもので、その層間に生じた隙間で起こる干渉が要因である。

即ち、干渉が起こる程度の層を持つ鉱物であれば、どのような鉱物でも虹は発生すると考えて良い。また、質の異なる二種類の長石や不純物が層を成して成長したサンストーン、ムーンストーン、ラブラドライトなどは、シラーのような独特の呼称が付された光の滲みを持つ。

虹の発生源である結晶内に生じた隙間には、大きく分けて2種類ある。一つは割れ。二つ目は、結晶と結晶の狭い隙間。また、表面に付着したごく薄い鉄の酸化被膜などにより、結晶内部と同様に皮膜と結晶面の間で干渉が起こり、虹が生じることもある。虹色を呈するシャボン玉が結晶の表面にあると考えれば分かりやすい。

 割れによる虹を貴重なものと考えて有り難がるのはどうかと思うが、綺麗であれば良いではないかと、頭の一方では許す気持ちもある。だが、求める際に後成的な欠陥か、天然のものかは理解しておいた方が良いだろう。もちろん割れであっても天然の成長に伴う割れがあり、採集時の衝撃による割れとは異なることから許容される方も多いだろう。

 天然の割れとは、高温で結晶した鉱物の温度が下がる際にひずみが生じて割れになったもの、また地震などで結晶内部に潜む劈開部分に生じたものが多い。蛍石や魚眼石、トパズなどは、劈開が強いことから、ちょっとした衝撃で内部にひずみや割れが生じる。

オパール Opal SiO2・nH2O

Mintabie opal field, Mintabie district, North West Province, South Australia, Australia

オパールの遊色は、微細でしかも粒の大きさが揃った球状のシリカが規則正しく並んだ、回折格子と同じ構造状態にあるために起こる。ここに入射した光が回折を起こして虹彩を呈すると同時に、珪酸の層間に空隙があって薄膜状となり、層間で干渉が起きる。この二つの虹彩が重なり合って見えているのである。ブラックオパールと呼ばれる濃密な色合いの虹は素敵ではあるが、このような穏やかな虹彩も魅力的である。