ロシアはDal’negorskの蛍石は、大きく成長度合いの異なる時期があった。それが故に、写真のように、初期の蛍石とその後に成長した蛍石ではかなり様子が異なっている。中心の八面体、その端部に成長している六面体。六面体の中には、八面体の端部が見える。詳しくは《I LOVE FLUORITE 蛍石大好き》でご覧ください。
栗生 長野県南佐久郡南相木村
10年ほど前になるだろうか、緑色の綺麗な石榴石が出ていると噂されたものの、数人からこの産地の石榴石をいただき、ついに採集には行かなかった。もちろん大粒で光沢の強い結晶が美しいが、小さな粒状の結晶の叢付いている試料が気に入っている。スカルン環境では似ているロシアのDal'negorsk近隣で産出した灰鉄柘榴石(Andradite)と角閃石によって灰緑色に見える水晶の組み合わせになる試料を思い出した。栗生の近くの甲武信鉱山の方がこの組み合わせがありそうだが、筆者は見ていない。甲武信産の、この組み合わせの試料をお持ちの方がおられたら拝見させてほしい。
Near Dal'negorsk, Russia
知人からいただいた試料。一度見学したい産地だが、実現せずにいる。かなりハードな路程であることと、産出鉱物が水晶と灰鉄柘榴石(Andradite)だけなので面白味のない故か、誰もつきあってくれない。危険なところで、一人では行けそうもないし…。
長野県南佐久郡川上村の大深山鉱山産の灰鉄柘榴石(Andradite)。透輝石の小さな粒状集合、結晶質石灰岩の隙間に生じた2ミリほどの粒状結晶。石榴石の試料としては見栄えのしないものだが、溶解した母岩の表面に突出した結晶の様子、水石のような自然の様子が好ましい。
大深山鉱山は、ずいぶん以前に採集にいった鉱山跡。雪もない五月頃で、天気が頗る良く、快適な採集の予定であったが、マムシ、ヤマカガシ、アオダイショウといった細長くウネウネと動く生物が活動を始めていた。このての長いのが苦手な筆者は、採集どころではなかったことを記憶している。
石榴石のほか、数センチほどだが紫水晶も採集した。もちろん小さいながら水晶の日本式双晶も得ている。
Dal'negorsk, Primorskiy Kray, Far-Eastern Region, Russia
犬牙状方解石、微細な白い柱状の沸石様不明鉱物、小さな魚眼石、束沸石と推測される板状結晶を伴う、透明感のある褐色で端整な灰鉄柘榴石(Andradite)。
色の鮮やかな鉱物に目を奪われ易いのか、青緑色のスピネルを採集しながらなぜ石榴石に気付かないのか不思議に思う。ここの灰礬柘榴石(Grossular)は、無色半透明からごくごく淡い褐色で、この試料では最大で5ミリほど。写真のように空隙があれば自形結晶もみられるが、多くは結晶粒の集合。青緑色はスピネルで1ミリ以下で、灰礬柘榴石の隙間に点在する。下写真の試料も同じ産地だが組み合わせが異なり、緑色の板状結晶は透明感のあるクリントン石。
埼玉県秩父市大滝(旧秩父郡大滝村)。
珍しいと言えば頗る珍しいのが、新潟県柿崎の黒岩にあった採石場から産出した、かなりのチタンを含む灰鉄柘榴石(Andradite)で、チタン柘榴石(Schorlomite)としても良い試料。結晶の大きさは最大で2ミリほど。真黒で光沢が強く、菱形の結晶面が顕著。写真の試料には、石榴石の他にも、トムソン沸石、珪灰石、ダトー石、透輝石が観察される。
火山岩の一部にスカルンを伴った採石場で、そのスカルンから沸石類やスカルン鉱物が採集されたのだが、現在は採石を止めて久しく、新たな鉱物は採集されていないようだ。それでも採石を止めた数年後に採集したのが下の試料。白いのが針状結晶の放射状集合になるスコレス沸石。その隙間に灰鉄柘榴石(Andradite)が観察される。この試料片には、真黒でわずかに柱状に見える微細な粒状の結晶が散在しており、チタン柘榴石を疑ったが、角閃石であった。スカルン鉱物は運に頼らねばならないが、薄い板状のレビ沸石や輝沸石は採集できそうだ。