≪手を動かさねばっ!≫

日常で手を使うことや思ったこと。染織やお菓子作りがメインでしたが、病を得て休んでいます。最近は音楽ネタが多し。

高野秀行 『謎のアジア納豆』

2016-12-11 10:56:09 | 本 (ネタバレ嫌い)
高野秀行 『謎のアジア納豆』  ← アマゾンへリンク


アジアの納豆については 吉田よし子著『マメな豆の話』 を読んでいたのでその豊富なことは知っていた。 
なかなか興味深いテーマであったので、今回出た高野氏のこの本を図書館で借りて読んでみた。

まえから思っていたことではあるが、研究者の書いた本とライターの書いた本に分けると、
わたしはどうも研究者の書いた本の方が愛が満ちていて好きなんである。
さて、この本はどうだろうか?

著者の高野氏は早稲田大学探検部出身で、あちこち危ないところに出かけてはそれを書く、という人らしい。
そう、研究者の本ではない。
しかし、納豆に対する愛は負けない。
というか、納豆の研究者があまりいないのかもしれない、と、この本を読んで思った。
いるとすればメーカーにであって、そこからあまり情報が出てこないようなんである。

この本はライターらしい飽きさせない話の持って行き方で、
ともすれば散漫ともいえるが、そのとっ散らかった感じがむしろ
アジアにおける納豆っぽいともいえるし、題材とマッチしていてまあいいか、というところ。

大豆から作られる発酵食品といえば、納豆のほかに、味噌や醤油があって身近だが、
それらと納豆との比較、もしくは、それらに対する納豆の位置、という
著者独自の結論がたいそう面白かった。

載っている色々なレシピを試してみたい、と思ったよ。
納豆を自作するのは、ちょっとためらうけど。


食文化というのはほんとうに面白い。


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木村学/大木勇人 『 図解・プレートテクトニクス入門 』

2016-07-14 21:16:17 | 本 (ネタバレ嫌い)
最近 地震がよく起きる。 避けようのないところが恐ろしい。

というような通奏低音のあるところで ふと本屋で目に留まったので、手に入れてみた次第。


木村学/大木勇人 『 図解・プレートテクトニクス入門 』   ← ブルーバックスのこの本のページにリンク


こういう説明文を読むことは時々あるのだが、
研究者が書いたものは対象に対する愛と知識はたっぷりあるものの、読みやすい文章であるとは限らず、
ライターの書いたものは耳目を引くネタが多くて文章も読みやすいことが多いが えてして卑近なことに終始しやすく
対象に対する掘り下げの物足りないことが多い。

この本の著者は二人いるのだが、研究者の木村氏とサイエンスライターの大木氏という組み合わせで、
上記の欠点をカバーし長所を最大限に引き出している本だと思う。
タイトル冒頭に"図解"とあるように、ふんだんに分かりやすい図がたくさん載せてあるのもとてもよい。


なにしろわたしが地学というものを習ったのは高校が最後で、かれこれ30年もまえのはなしなのだ。
そして、地学の分野はそのころと比べると格段に進んでいるようで、この本を読んで、

へぇ~!   続出なんであった。

自分の生活しているこの地球がこんなにダイナミックなものだとは!


岩石の性質から なぜプレートが動くのか という説明を導き、最後にやっと地震の話にたどり着く。
なるほど、ここから説明してくれて初めて納得がいく。
とてもワクワクしながら読めた。

地球っておもしろい!!


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森山徹 『 ダンゴムシに心はあるのか 新しい心の科学 』

2016-02-05 15:52:16 | 本 (ネタバレ嫌い)
森山徹『ダンゴムシに心はあるのか 新しい心の科学』  ← アマゾンへリンク

重度の活字中毒だと思っているのに、ここ数ヶ月 とんと本を読んでいなかった。
ついつい編み物してしまっているからなぁ。
という中、ひさびさに読んだこの本は心に響いてしまった。
著者の 「心」 に対するアプローチが独特でいろいろ考えさせてくれた。

理系なのか?と思うと哲学的と思える部分もあり、かつ
机上に限定されずあくまで己の体験から導くことを忘れない。
型にはまらず自由に深く突き詰めていく著者の思考がすばらしい。

自然科学者のどこが創造的なのか?
石居進 『カエルの鼻』 を読んだときも思ったのだが、
この 『ダンゴムシに心はあるのか』 を読んで、もっと分かった気がした。
知りたいことが分かるような実験を思いつくこと、
独りよがりではないけれどもハッとするようなオリジナルな思考をすること。

実験をする著者自身もときには観察対象にするところがとても面白かった。
そして 「結び」 には感動した。
著者は悩みぬいてここに至ったのだ。


たまには本も読むもんだ。





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なだいなだ 『 TN君の伝記 』

2015-04-13 18:33:24 | 本 (ネタバレ嫌い)


なだいなだ 『 TN君の伝記 』  ← アマゾンへリンク

福音館文庫から出ているので、いちおう子供向けということなのだろう。


著者があえて伏字にしているTN君が何者なのか、ネタバレ嫌いのわたしがいきなり冒頭で明かすのは
何か変な気もするけれど、あえて明かす。
明かしても話を読む動機が減るとは思えないから。
中江兆民だ。
幕末から明治にかけて生きた人で、
フランスのジャン=ジャック・ルソーを日本へ紹介して自由民権運動の理論的指導者として活躍した人だそうだ。


元来わたしは伝記や大河ドラマが苦手である。
なぜかというと、どこまでが本当でどこまでがフィクションなのか、見分けがつきにくいからである。
そこら辺を考えながら読んで/鑑賞していると、今一つ話に入り込みにくいし、
話に入り込んだが最後うまくだまされてしまうような気がするからだ。
ストーリーを作るうえで加えられた嘘を見分けるのも難しければ、
むかしの資料の中に混じった誤りを見分けるのも難しい。
まあ、真実ばかりを求めても仕方がない、幅のある中で受けとるしかないのだろう。


と、多少引いて読む。

明治維新前から国会が開かれるに至る経緯、そして日清戦争。
時代の立役者たちが血の通った人物像で描かれて、読んでいて面白い。
そして全体を貫いているのは、
おかみ vs. 民衆   という対立軸だ。

「社会契約論」 という言葉を久々にきいた。
ああそうだったのか、
われわれは国家に己の権利を少し譲渡する代わりに国家がわれわれの僕となるのだったのか。
わすれていたかもしれない。

なにしろ最近よく思うことには、
安倍君は何を考えているのか? 何がしたいのか? 本当に戦争したいのか!?
ということばかり。
世の空気がどんどんきな臭くなってきている気がする昨今のタイミングで
自由民権の話を読むのは、心の痛むことだったのだ。

もしかして、TN君の時代からちっともよくなっていないのではないか?
と思わされてしまう。

しかしそれは誤りだとも思う。
なぜならこの本に書かれているTN君の思いはかなりのところ
太平洋戦争の時代を陸軍幼年学校で過ごしたなだ氏が書いたものだと思えるからだ。
若者のように、全か無か、と単純に切り捨てて考えるようなことは、最早しない。
無駄に絶望することはない。

インターネットで色々な情報を入手することができるようになったし、
自分からも発信することができるようにもなった。
もちろんそれらの対価はある。リスクもある。
それでも何かを発信するだけの価値がある、と思う。

勇気をもって声を上げなければいけないのだ。


と憂鬱に希望を持ちつつも、この本は終わりに向けてどんどん暗くなっていったのだ。
最近の世の空気になにがしかの変化や違和感を読み取る人は少なくないと思う。
このまま流されていっていいのだろうか? と。
そういう人にお勧めの本だ。



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R・M・サポルスキー 著 大沢章子 訳 『サルなりに思い出す事など』

2014-12-06 14:42:36 | 本 (ネタバレ嫌い)


図書館でおすすめされた。
わたしが他の本を読んでいる間に、夫が先に読んでしまった。
非常に面白い、と言っていた。

というわけでやっと読んだのである。 読んでいれば、先を越されたのが悔しい、というような本だった。

R・M・サポルスキー 『サルなりに思い出す事など―― 神経科学者がヒヒと暮らした奇天烈な日々』 ← アマゾンへリンク


ポール・セロー『中国鉄道大旅行』を読んだ のが呼び起された。
1986年から約1年中国を鉄道で回った話だ。

で、今度読んだ本は、1970年代後半から約20年ケニアでヒヒを研究した話なのだが、
もちろん単純に研究だけの話ではない。
アフリカは中国よりもすごかった。 農耕民族とマサイの話とか。

そして、話にクライマックスがある。  まいった。

ああ人はサルだなぁ。
ヒトのようなものの世界とは社会とはどういうことなのか、考えさせられる。
もちろん、ユーモアは忘れていない。
そうだからこそ面白い。

素晴らしい本です。


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