大法寺に行った あとは松本だ。
演奏会の会場は 日本キリスト教団 松本教会 だ。建物の見た目からして歴史のある教会なのが分かるが、HPを見ると集合離散や移転があって、逆にいつ設立されたのか一読では分からない。一番古い日付は1876年7月ですって。
手書きの看板。手作り感があふれている。
開いた扉から入り、靴を脱いで上がる。アントレ編集部の品川夫人からお礼を言われる。アントレ編集部全面バックアップなようだ。
右へ行き階段を上がって、礼拝室に入る。
そういえば、明治村の聖ヨハネ教会堂 も礼拝をおこなう広い部屋は2階だったな。
奥にパイプオルガンがある。白くてかわいい。
そして、いつでも始められるように、という感じにヴィオラ・ダ・ガンバが椅子に立てかけてある。弓は譜面台の上だ。
アップ。
こうしてしげしげ眺めると、チェロとはずいぶん違うことに気づく。
弦が多くて指板は幅広だし、指板にフレットがあるし、撫で肩だし、表板の孔の形が違うし、指板はチェロほど高く傾斜していない。チェロよりほっそりしている。ヘッドも渦巻きじゃなくて顔が彫ってある。
2年ほどまえに 浜松市楽器博物館に行ってそのあと色々と調べた ので、バイオリン属とヴィオール属の違いは一応知っているつもりではある。
市民階級が力を持ってきて、いっぺんに大勢に聴かせるように音楽を聴く環境が変化した。そのため大きい音が出る楽器が使われるようになった。
そうやって追いやられたのがヴィオール属のヴィオラ・ダ・ガンバであり、チェンバロもそうだ。バイオリン自体もネックのつく角度が変わった。ストラディバリウスのバイオリンもみなモダンバイオリンに改造されている。
チラシ。アントレ のバックナンバーを送ってもらった中に入っていた。これがきっかけで聴きに行ったんです。
3年ほどまえに ポルタティーフオルガンを作ろう として 作り方の載っている号を送ってもらったのが最初なのだが、その後チェンバロを手に入れレッスンを受けるようになって知りたいことが出てきた。ソルミゼーションについてとか読みたい記事があるのに気づいて 送ってもらったのだ。
やっと演奏会のはなしをば。
品川聖氏が礼拝室に入ってきて椅子に座り、楽譜を広げて演奏を始めた。
チェロほどビブラートをかけないのが素直な感じで、わたしは気に入った。
指板のフレットは7本しかなくて、それより高い音はフレットのないところをチェロのように押さえていた。
ギターのようにコードを押さえたり下の旋律を同時に演奏しているのが面白かった。
曲が終わってシャイな様子で話しはじめた。
最近聴きに行ったライブ等の出演者はもっと積極的に聴衆に話しかける人たちばかりだったので、新鮮だ。
ヴィオラ・ダ・ガンバはスペインのギターに似た ビウエラ という楽器が祖先と考えられているそうだ。
えっ? 弓で弾く レベック とかから直接進化してきたわけではないのか !?
ネックのある弦楽器で胴がくびれているのは弓で弾くときに当たらないように、だと思っていたのだが、それを指で撥く用に転用して もう弓は胴に当たらないからくびれていなくてもいい筈なのにくびれたままなのがビウエラとかギターとか思っていたのだが、もう一回反転してヴィオラ・ダ・ガンバになるって、ふしぎだー。まあ、形が音色に出るから、弓を使わなくなったからといってくびれをなくすわけにはいかないかな。
とか思ったが、ビウエラという言葉は範囲がひろくて、指で撥くものも プレクトラムで撥くものも 弓で擦るものもあるそうなので、一旦弓から離れたわけではなさそうだ。
ちょっと調べてみたら、レベックは丸ごとの木を削り出して作ってあり表板を貼り付けている構造をしているのに対し、フィドルは表板・側板・裏板が別々の部品として作ってあるそうだ。 私家版楽器事典 フィドル と レベック むかしむかしのヨーロッパの擦弦楽器
それならヴィオラ・ダ・ガンバはレベックの系統ではないな。
フレットがあったりコードを押さえたりするところは本当にギターっぽい。
話を戻す。
この演奏会のテーマはチラシにあるように「時空を超えて」で、おおよそ200年にわたってヨーロッパの様々な地域でヴィオラ・ダ・ガンバために書かれたソロ曲が古い順から演奏された。
品川氏のHP にチラシが表裏とも掲載されていて、裏面には曲目が載っているのでリンクを貼る。
ディエゴ・オルティスから始まる。ヴィオラ・ダ・ガンバのソロ曲の最初期のものだそうだ。
ヴィオラ・ダ・ガンバの生演奏、というより生ではないヴィオラ・ダ・ガンバの演奏もほとんど聴いたことがなかったので、ほええ、と聴いてしまう。
これはチェロとはぜんぜん違う!
その次はトバイアス・ヒューム。1579-1645、イギリスの職業軍人でガンバ奏者だ。
ヒュームの「ガンバの魂」と「兵士のガリアルド」を品川氏は演奏した。
わたしはここのところずっとチェンバロでフィッツウィリアム・ヴァージナル・ブックというイギリスのルネサンス末期~バロック初期の曲集を練習していて、ガリアルドなんかも弾いているので、親近感がわく。
カルロス・ハッカルト、ゲオルク・フィリップ・テレマンと続いて前半終了。
前後半を通して聞いたことのある作曲家はテレマンだけでした . ... 。 古楽の世界も奥深いよ、勉強不足だよ。
休憩のときに弓の写真も撮った。チェロの弓とはなんだか違う。
スクリューとフロッグ、ヘッドも形や素材が違う。
後半はフランスのドゥマシ、マラン・マレと続く。
品川氏いわく、ガンバの良さが最も出るのはこのあたりのフランスのバロックだそうだ。このあたりが一番好きなんだろうなあ。
そのあとはカール・フリードリヒ・アーベルで、最後に20世紀のパブロ・カザルスがカタロニア民謡をチェロ用に編曲した「鳥の歌」で終わった。
スペインで始まりスペインで終わるプログラムだね。ルネサンスからバロック、と移り変わる曲想も楽しめた。
ヴィオラ・ダ・ガンバはチェロとはずいぶん違う、ということがよく分かった。つやつやとビブラートをかけまくるチェロは、わたしはちょっと疲れるんです。古楽のほうが古典派よりもわたしは好きだ。
もっというと、バロックよりもルネサンス、それもバロックの香りがほんのりするルネサンスも終わりの方が大好き。同好の方、どうぞお声がけくださいませ。
アンコールはドゥマシでした。
パイプオルガン。
鍵盤は1段、ストップも7つ。シンプルだ。どんな音色なのだろうか。
パイプオルガンの反対側にはリードオルガンがあった。
ストップもいくつもある立派なものだ。浜松市楽器博物館とか明治村とかにあるものに似ている。こちらも聴いてみたいな。
演奏会が終わって教会を出る。
松本市立開智小学校の向こうに旧開智学校が見える。
さっさと車に乗ってしまったが、旧開智学校も国宝なんだよなあ。寄ればよかったよなあ、とあとで思ったが、演奏会の日はまだ修理中だったようだ。
次は見学したいな