現在、工場にてT邸の木材加工が行われています。
本格的な伝統構法の「木組み」による住宅。
100年後の古民家です。
先日、「トキっこクラブ」の営業の方が来社して、各種イベントやマーケティングのお話をしてくださったのですが、住宅他社の動向として「架空のペルソナ」を設定して、その人に向けての広報、営業展開を画策していくという手法が取られているそうです。
例えば、30代の夫婦で6歳、4歳の二人の子供が居て・・
という風に具体的な家族像を「ペルソナ」として設定していき、その家族向けに告知、チラシ、設定提案を行う。それが上手くいっている企業が、事業成績が良いとのこと・・「何を売る」のかのコンセプトも重要だとか・・
それでは、当社の場合はどうなのかと訊ねた訳です。
商品として、「地元県産材を使った伝統構法の家」なわけですが、この需要はものすごく少ない。
そして、対象のペルソナとしては、年齢も家族構成もまちまちです。
御年輩の方も居られれば、若い方も居る。
強いて言えば「環境に興味があり、積極的に社会貢献をしたい人」という、極稀な人達を追っている。
それには、営業さんも困っていた・・
売りたい商品の定義自体が問題なのかも知れません。
「社会から見放されているモノを売る」
というコンセプトは、現在のマーケティングには乗ってこないのです。社会的な観点から見て、「価値観」はあるのですが、具体的な商品としては「売れないモノが商品」。それを売る会社は、倒産の方向へいってしまうのは目に見えている。
そんな感じがただよって、営業さんも今後のイベント案内に切り替えていきました。
ただ、営業の方が帰られた後で考えてみたのです。
ウチの会社を尋ねるお客さんは、確かに稀な存在ではありますが、「地元県産材を使って伝統の技を使った長寿命の家」を望んでいるわけで、その年齢にはばらつきがあります。若い方も年配の方も居られます。
そして、私の作っている家は100年後に古民家として残る家です。
うすっぺらい金物なんて100年ももたないし、1回大地震が来れば緩んでしまう。コンクリートだってボロボロになる。地盤改良だってわからない。
でも現存している200年、300年の古民家は、ちゃんと建ってるワケで、それを継承している私の家は確実に100年後も建ってるのです。
住宅ローンが終わって生活形態が変化すれば解体するような消耗品の住宅ではなく、孫の代も使える伝統構法。
お客さんの年齢も家族構成も設定できないのですが、ひょっとしたら、
100年後に暮らしている人の為に作っているのではないか・・・・
「100年後のペルソナ」
です。
今は姿も形も無い100年後の人達が暮らしている家。
その人達への設計提案であり、構造の提案でもある。
住宅だけではありません。環境的にどうなのか・・
現代社会の石油製品は、その時にあるのか・・食生活はどうなっているのか・・
山の木はどうなっているのか・・
そういう問いに対する答え探しを具体的に実践し、形にしてきたのだと思うと、まぁ、確かなモノ作りをしてきたのだなぁ・・と思ったワケです。