【鬼平が斬る ~ 「男の作法」池波正太郎から
~ 他山の石として己を磨くべし
~ 下品(げぼん)切るべし の巻】
■てんぷらは、揚げたてを 喰らう
鮨の場合はそれほどでもないけど、
てんぷらの場合はそれこそ、
「揚げるそばから食べる……」
のでなかったら、
てんぷら屋なんか行かないほうがいい。
そうでないと職人が困ちゃうんだよ。
よく、てんぷらの揚がっているのを前に置いて、
しゃべっているのがいるじゃないの。
そういうのはもう、
一生懸命、自分が揚げているのに 何だ
というので、がっかりするんですよ。
(中略)
わさびは、醤油に溶かさずに、
刺身の上に乗せる。
たいていの人はわさびを取って
お醤油で溶いちゃうだろう。
あれはつまらないよ。
刺身の上にわさびをちょっと乗せて、
それにお醤油をちょっとつけて食べればいいんだ。
そうしないと わさびの香りが抜けちゃう。
醤油も濁って新鮮でなくなるしね。
◇
碁にも局面により
考えるべきところ
長考すべきではないところ
がある。
形と筋を格言通りにポンポン置くのも、
気っぷがよくってよろしいか?
おなじみ時代劇の殺陣よろしく、
流れるように打っていくのも美しいか?
指か腕の運動くらいにはなるが……。
(万年上級、万年初段あたりに多い)
といっても、
アマの碁で長考長考の連続は嫌われる。
本人も「迷っているだけ」である。
そして、やがて対局相手がいなくなる。
碁会のお誘いリストからも外れる。
だからといって、
「そこは考えるところか?(→早く打てよ)」
などと横からチャチャを入れるのは、もってのほか。
こういう輩を出入り禁止にする骨のある碁会所も多かった。
同好会でもこれを放置すると、場の雰囲気が悪くなる。
わたしは今春、ある碁会を退会した。
理由を聴かれ、適当にごまかした。
立つ鳥跡を濁さず、というべきか?
目前の相手を正すのはムリ、ムダである。
他人の時間を奪うのも
愉しみの心を奪うのも
いうなれば立派な“盗人”。
ああ、悩ましい。
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