『一枚の絵画と詩』
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『吹雪・アルプスを越えるハンニバルとその軍隊』 1812年頃
ジョゼフ・マロード・ウィリアム・ターナー(1775~1851)
ターナーの風景画は、半ば瞼を閉じ、まつ毛のあいだに散乱する光を通して、その光の震えを捉えようとするかのような瞬間の世界を描きだしていると言われます。
また、ターナーの描く作品は「崇高」の感情に浸された自然現象または気象現象のイメージには違いないが、同時にまた、彼の内部から生まれた幻想的なイメージに外ならないと。
この作品はハンニバル戦役を描いたもので、ハンニバルは吹雪の中アルプスを越えていきローマ軍から勝利。ハンニバルが必死の思いで峠を越える様子が描かれています。暗い岩陰に逃げ込む兵士たちの集団の上に重く不気味に覆いかかる巨大な恐ろしげな空には圧倒されます。
まさしく、自然の崇高と幻想の画家であり、数々の、自然描写と幻想のせめぎ合いの作品に、息をのむ私です・・・・。