第四十章 去用(去が 用(はたら) けば来がある)
反は道の動なり。
弱は道の用なり。
天下の万物は有より 生 ず。
有は無より 生 ず。
この章は、反は動の本であり、弱は強の本であり、無は有の本であるという、道の根本原理について説く。
人は、行くということについてはよく考えているが、かえるということについてはよく考えていないことが多いのである。例えば、山に登ったり、遠方へ行ったりするような場合は、頂上に着き、或は、先方に到着すれば、それで目的を達したように思うことが多いのであるが、そこで、登山のことが終ったわけではない。必ず下山して帰って来るまでの体力や、食料や、時間を用意してかからなければならぬのである。
人は、動と、強と、物を重視して、これだけあればことが足りると思いがちであるが、これらはその反面であって、他の反面であるところの、反と、弱と、無こそは、その本となるものであることを忘れているのである。
すべてのものは、その出て来た元へかえり、静かになるものである。従って、反と、弱と、無は、すべてのものの本であり、道である、ということをわすれてはならないのである。