高麗川(こまがわ)の川べりを散策する楽しみの一つは、いろいろな鳥たちに出あえることです。奥武蔵の里山に居を構えてかなりの年月になるのですが、この間、ほとんど東京に通勤する「埼玉都民」の状態であったため、地元の川にこれほど豊かな種類の鳥たちが棲息(せいそく)しているとは、迂闊(うかつ)にも全く知りませんでした。
もちろん休日はあったのですから、知っていれば、もう少し積極的に川辺に来て鳥たちを観察していたに違いありません。もったいない過ごし方をしていたものですが、思えば、日々の生活や仕事に気を取られていたこともさることながら、奥武蔵の自然の魅力は「山」ばかりにあると思い込んでいたのも事実です。
遅ればせながら、「川」の魅力を再発見してからは、散策コースの重点も山道から川辺に替わりました。
高麗川の川沿いも、私が移り住んできたころに比べると、台風による増水の影響などもあって、景色がずいぶんと変わりました。かつて子供たちが水遊びやバーベキューを楽しんだ穴場のスポットも、砂地が削られ草木が生い茂って、近寄りがたくなってしまいました。一方、場所によっては、治水対策と観光促進を兼ねて、遊歩道が整備されたところもあります。
それでも、今なお、水面(みなも)に多くの鳥たちを見かけることができるのは、ありがたいことです。といっても、自然界のことですから、動物園と違って、ここへ行けば必ずこの鳥がいるというわけにはいきません。一度 出あえたから翌日も、と期待して出かけると、肩透かしを食らうこともしばしばです。
しかし、いつでも出あえるわけではない、この偶然のラッキーさこそが、じつは川べりの散策の最大の楽しみなのです。先日は、祥雲橋(しょううんばし)の下流の、流れが大きく蛇行する淀みに、アオサギとダイサギ(シラサギ)とカモが一緒にいるシーンに出あいました。急いでカメラに収めましたが、互いに干渉することなく、それぞれに自由を謳歌(おうか)している様子です。何と心和(なご)む、平和な光景なのでしょう。
折しも、人間界は、ロシアが仕掛けたウクライナ侵略という醜い戦争を、止められずにいます。水面に憩(いこ)う鳥たちの姿を見ていると、争いに明け暮れしている人間の愚かさに、嘆息(たんそく)せざるをえません。
平凡ではあっても、日常の散策コースの中に、こういう鳥たちとの小さな出会いがあることは本当に嬉しいことで、奥武蔵の暮らしの幸せを感じます。
(写真上)©水面を移動するダイサギ(左)と微動だにしないアオサギ(右)
(写真上)©手前からダイサギ、アオサギ、カモ
(写真上)©岩の上に立つアオサギと手前の水面を飛び立つカワウ(別の日、同じ場所)
*****************************************************